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Episode8-2

岡部さんとの出会いは昭和19年4月末の頃だったかな。岡部さんは俺の2つ年上のベテラン搭乗員だが、俺はあの人が後世に残るほど凄い経歴を持った人だということは戦後になってから知り、初めてあった時も別れの時まで操縦の上手いベテランだということしか知らなかった。輸送機から降りてきた岡部さんはずんぐりとした男で、羽鳥さんもそうだったが170前後と当時の平均以上の身長を持っててケロイドが広がった顔と相まって厳つい堅気のような男だった。

初めて話したのは着任したその夜に、食堂で俺は岡部さんの列機として呼び出された時だった。

「俺の列機となったら奴らは集まれ!」

あの時は挨拶代わりに殴られるんだろうなと同期とげっそりしながら向かうと、岡部さんは祝いに司令から頂いた酒を我々列機に振舞ってくれた。岡部さんは煙草はそこそこに酒飲みで毎晩岡部さんの列機として浴びるように酒を飲んだ日々は本当に楽しかったよ。あの人に酒というものを教えてもらったし、酒による失敗も沢山させてもらった。

今でも瞳を閉じると岡部さんと羽鳥さんが楽しそうに浴びるように酒を飲み、周りに酒瓶が転がっている姿が浮かんでくるよ。そこに酒に溺れてひっくりかえっている俺たち同期たちを呆れたように笑いながら見守ってくれていたのが暖かかった。

岡部さんは理不尽に怒ることは無く、あの人が怒る時には正当な理由があり列機から絶対に離れるなと耳が痛くなるほど言われていたのに、本番になると皆、目の前のことに夢中になり列機から離れてしまうことがありその時は着陸後、吹っ飛ぶのではないかと思うほどの力で殴られたものだ。

あの人は約束を守らず離れてしまった俺が殺られてしまわないように視界の端に入れながら戦うという高度なことをしていて、殴られた俺は拗ねるよりも申し訳なさでよく岡部さんの前で頭を地面に擦りつけたものだよ。何よりあの人に見放されることがあの頃は怖かった。

岡部さんはやはり撃墜王と呼ばれていただけあり、操縦も射撃も上手い人だった。しかもあの人は教育も上手くて、あの人の下に着けたから今の俺が生きていられると思うほど実戦で培ったことを多く仕込まれた。空戦での勝ち方など普通なら教えられないであろうことも教えて貰えた。

羽鳥さんとの出会いは岡部さんと、ペリリュー島からフィリピンのダバオへ移動した後の事だった。この頃になると俺も日々の空戦で戦果を出していたがある日、我々が所属している201空の301隊分隊長が海兵70期であること事が発表された時は、同期の奴らと前線での経験の少ない70期何かが我々の分隊長なんて務まるんだろうかと陰口を叩いたが、邀撃戦の時あの人の実力を見たあとは皆感服して陰口を言うやつなんて居なかった。特に心酔したのが岡部さんだった。あの人は羽鳥さんの悪口を言うやつはたとえ上司だろうと殴り掛かり、それを必死に止める我々を羽鳥さんはいつも止める様子もなく程々になと手を振って応援する始末だからもう大変だった。

羽鳥さんは我々がすることを止めることはあまりなく、あの人が止める時は本当に責任が取れないと判断した時だったと戦後、戦友会の集まりで当時の上司が教えてくれた事により疑問が一気に解消されたことを覚えてる。しかし、今までやらかしたことを思い出すと、あの人も問題児でよくやらかしていたが我々も同じくらいやらかしていたから結構、羽鳥さんの負担は大きかったんじゃないかと戦後働き後輩の失敗を肩代わりをする日々を送る中でようやくあの頃の有難みを感じたよ。

羽鳥さんが着任してから直ぐに俺はダバオにいた憲兵にイチャモンをつけられ腹が立った俺は部隊名を堂々と名乗ったことにより、俺や一緒にいたヤツらの明け渡しに憲兵が乗り込んできたことがあった。

「貴様ら偉そうなことばかり言いおって!もし問題が起こってもそのことはこちらで処理する。偉そうに口だけの貴様らに私の部下は指一本触れさせんわ!!……何度来ようが変わらんからな」

本当に着任早々に我々を庇い追い払ってくれた姿は本当にかっこよかったし尊敬する上司だった。

まさかあの時庇ってくれた上司と終戦直前まで行動をともにするとは全く思っておらず、次また部隊移動になったら羽鳥さんのような上司がいいなと思った頃もあった。

あの二人は私の本当の兄のような人だった。

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