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Episode6-4

「あの時列車から見た零戦が文兄であったのか分かる人はいません。しかし、あれは私たち家族が知る羽鳥文彦だったと私たちは確信しています。」

 軍と言ったら堅苦しい印象があり、まさか個人の事情で戦闘機を乗ったのであれば、さすがに怒られても仕方がないことだろうが、もし百合子が見た戦闘機に乗っていたのが羽鳥文彦であったのなら妹思いであった文彦が最後の願いをかなえるために乗っていたと思うとかっこいいと侑人は感じた。

 話を聞いていると率直に思ったのは、文彦はあの戦争を生きて帰ってくる気はなかったということが分かった。終戦を迎える前年に南の地から戦闘機の補充のためと帰還し、家族と再会した文彦が何を思っていたのかは分からないが、一時でも家族に会えて心が休まったのではないかと侑人は思った。

「祖父はとても家族思いな人だったんですね」

「……そうね、文兄は母と兄妹を愛してくれていたと思うわ。昔から血気盛んで悪さもして、外で走り回るガキ大将かと思ったら本が好きでいろいろな本を読んでいたのよ。当時だと芥川龍之介や志賀直哉が人気だったけど洋書や戦記などとにかくいろんな本を読んでいて、私たちは将来文学者になるんじゃないかと思っていたほどよ」

 文彦が本を読んでいたという表現は今まで聞いてきた人たち全員が共通で話してくれることだが、洋書も読んでいたことに驚く

「祖父は英語もできたんですね」

「あら、海軍兵学校は英語が必須のエリート校と昔は言われていたのよ?私は英語なんて分からなかったけど、文兄は話すこともでき、昔は世界が平和になったら外に行ってみたといっていたもの」

 侑人が目指している防衛大学も東大レベルと聞くこともあるが、海軍兵学校も当時、兵学校は落ちたが帝大には受かったという話もあるほど体が丈夫であることだけではなく、学力も十分に必要であったことが分かる。たしか、門倉が中学の頃の文彦の成績は東帝に行くことができたと言っていたことを思いだす。そこで、侑人は自身の学力のことを思い出し夏休みだが、そろそろ勉強を始めないとなと意識が少し遠のく気がしたが、すぐに意識を戻す。

「ここまで祖父の話を聞きましたが、本当に実在した人なのか疑いたくなるほど勉強も運動もできた人だったんですね」

「本当に規格外の人だったよ文兄……いや、あの頃の戦って亡くなった人たちは現在の私たちから見ても規格外な人が多く存在し、そういう人たちが特にあの戦争で活躍し最前線で散ってしまった。生き残った人たちの中に新たな事業に成功したり社長になっている人がいるのもいい例だわ。あの頃は規格外の人が多くいた。今の右に倣えの無難な思考しか持てない変な教育は人間を非力にするだけでつまらないわ」

 百合子は自身で父親と顔が似ていると先ほど話、文彦の目も父親似であったといってた。今のつまらなそうな冷たいまなざしにきつい目元は、もしかしたら会ったことはないが文彦も似たような眼差しを当時していたのではないかと侑人は思ってしまった。その後すぐにごめんなさいと笑顔になったが、なんだか親族にあったおかげか写真の文彦がどんな表情を作るのか少しわかったような気がしてうれしかった。

 百合子の家の近くに昔ながらの本屋があり、そこは文彦が兵学校に行くまで通い詰めていた本屋だということを教えてもらい、帰りに寄ってから帰ろうと侑人は心に決め百合子と別れた。

こぼれ話

・実は妹がもう一人いる。

一蔵、永子、文彦、琴子、百合子

・父親も招集にて戦死している。

・永子が大阪に嫁いでいた為、文彦は自宅に帰るより永子の元に長期休暇は通っていた。

・甥っ子に多くの本を渡し読み聞かせていた。

・琴子は文彦瓜二つで、文彦の部下が度肝を抜くほど外見も中身も似た人物

・大好きな兄と似ている琴子姉のことを百合子は苦手に思ってい

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