Episode5-2
俺が羽鳥に出会ったのは飛行学校時代、38期飛行学生だった。兵学校としては羽鳥の1期上だが飛行学生としては同期で特に仲が良かったわけではなかった。
羽鳥は特に目立つ学生というわけでもなかったし、なんというか……特に容姿が軍人らしくなくて注目を集めていたことは覚えてるよ。女性のような顔立ちをしていたが気の強そうな目に変なやつがちょっかいをかけに行っている姿をよく目撃したものだ。
だがあいつも帝国軍人らしくちょっかいをかけてくる奴らをことごとく倒していく姿は圧巻だったよ。倒される奴らも上官にチクれば自分のこともバレてしまうから誰も上官には報告をしないがよく投げ飛ばしたり蹴りを入れてる姿を目撃すれば営内での話題のひとつになったものだ。
多分あいつの本性というより本領発揮をしたの大分基地の頃だな。あいつは多くの戦闘機を破壊した破壊王、最終的には破壊神とまで呼ばれるようになってたよ。
着陸時に何度も戦機がひっくり返って大破した姿はもう羽鳥が飛行訓練していた時は風物詩みたいなもので、教官も何度が怒り折檻をしたが治ることがなく飛ぶ日にポンプ班が用意されるようになったんだから笑えるよね。
あいつの空中戦の特徴は、とにかく相手に近づき相手が怖気付いて避けようとしたその瞬間を狙った攻撃方法だ。この特徴は羽鳥の晩年の対B29への攻撃方法として他の部隊でも推奨される戦法を編み出したんだから驚きだ。専修時代は教官によく近づきすぎだと怒られ、中にはもう羽鳥とは空に上がらんと言った教官もいたほどだからな。
あいつは捨て身の戦法を編み出す天才だがよく着陸時に機体が転倒していたのも、滑るから着陸するなと注意されていたところにわざわざ降りて転倒破壊だ。いつか羽鳥は飛行訓練中に死ぬのではないかと思っていたが、毎回もう助からないと思えるほど機体が大破していてもあいつはたんこぶ1つで俺たちの前に現れていたんだから……そんな奴がまさか戦闘中に消息不明になるなんて思わなかった。
飛行学生時代に同期になっただけでかかわり合いはあまりなかったが、あいつは死なないとどこかでは思ってしまっていた。
あれだけ空中戦に優れてて敵の倒し方先方まであみ出していた羽鳥が、機体故障で亡くなるなんてね。
……あ、1度あいつと話したことがあったな。夜トイレのために外に出ると空を眺めてタバコを吹かす羽鳥を見つけて、珍しく一人でいるものだから疑問に思ってたことをぶつけたんだよ。
「なぁ、貴様。なぜこんな無茶なことをする?実践でもなく練習中に死にたいのか?」
「……別に死にたい訳では無い。死ぬ気なら着陸時に脱出なんかせん。練習だからこそ無茶をするんだ。戦闘時に失敗して戦線離脱するより今失敗していた方がマシだ。滑走路もこれからの戦いでこれほど整備された場所に毎回着陸できるか分からないから、ボクは死なないために練習をするんだ」
俺が話しかけた時、羽鳥は驚いていたがしっかりと答えをくれたな。今思えば羽鳥のやつ俺の名前知っていたのか疑問があるが、あの時の最後にニヤリと笑ったあいつの顔は今まで見た羽鳥の顔の中で1番大人びて見えたから覚えてるよ。




