Episode5-1 本野努
侑人は名古屋に帰り、祖母の家に着くと祖母は暖かく迎え入れてくれた。祖母の話によると、侑人が東京に行っている間に父の和樹が訪れて侑人を連れて帰ろうとしていたという。その時に祖母が和樹のことを叱ったらしく諦めて帰っていったのだとか。
侑人は父が一番苦手なのは祖母に怒られることだと知っているため何だかしょぼくれている父を思い浮かび頬が緩む感覚がした。
「父さん、まだ進路のこと怒ってた?」
「……あの子は頑固だからね。1度決めたことは変えたくないのよ……でも叱っておいたから少しは変わってるかもしれないわね」
父さんのこと実は少し怒ってたんだとぼんやりと聞きながら、東京で得られた情報たちをノートに丁寧にまとめていた。まぁ、祖母が祖父のことを愛しており、その生きざまを含めて祖母が一目ぼれをし愛した男だと、羽鳥文彦の話を各所から聞いて侑人は分るが、女手一つで苦労して働いていた母の後ろ姿ばかり見ていた息子とは羽鳥文彦に対する感情のずれが起こっている。
和樹に羽鳥文彦のことを語るのはすべての資料がそろってからでいいやと祖母に、夏休みいっぱいまで祖母の家に泊まる許可をもらい次はだれに会えるのだろうかと、一気に出していた手紙の返事たちを漁る。
「……じいちゃんの兄弟に兄姉妹の四人いるって聞いたんだけど、会ったことある?」
「1番下の妹さんに会ったことがあるわ。文彦さんがとても可愛がってて顔があまり似ていなかったけど雰囲気がそっくりだったわ。戦後に文彦さんの部下の方と結婚してからは自然と連絡も取らなくなってしまって分からないわ」
「……そうか、俺が出した手紙に対していい返事ばかり着てわざわざ名古屋まで来てくれる人もいるみたいなんだ。じいちゃんは愛されてたんだね」
「そうだったらいいわね」
侑人は立ち上がり数枚の手紙を持って出かけてきますと、外に出て行った。持ち出した手紙には羽鳥一蔵と書かれたものと田波百合子旧姓羽鳥と書かれた手紙だ。祖母に兄弟のことを訪ねたのもこのためだったが、祖母はあまり反応をしなかったためそのまま持ち出した。
そしてもう一つの手紙を出し、そこに書かれている電話番号へ連絡を入れ、こう返事をもらいこれから会う男、相手は38期飛行隊で羽鳥文彦と同期であった本野努。
ちょうど家族旅行で名古屋に行くため、連絡が欲しいとの手紙が来ていので連絡すると今日でも空いていると言われ会うことになった。場所は久屋大通に面する鶴舞公園だ。
侑人は地下鉄に乗り鶴舞公園を目指す。公園ではイベントをしており多くの人でにぎわいかえっており、目的の人物に会えるかどうか不安であったが事前に目印を決めていてよかったと胸をなでおろした。
目印の場所にも多くの人がいたが年を兼ねても軍人としての姿勢和崩れていない、姿勢のいい人物に話をかける。
「初めまして、本野努さんで間違いないですか?」
「……君は羽鳥侑人君かい?」
「はい、今日は祖父のためにお時間いただきありがとうございます。」
「こちらこそ昔話を聞いてくれるなんてね。羽鳥とは飛行学校でしか一緒にいなかったがそれでもいいかね?」
「お願いします」
本野と挨拶した侑人は二人で涼しい喫茶店へと移動し、話すことになった。




