三谷視点 4
作者:投稿確認しよ。
以下略。
さて、三谷君してんラストです。
数分走り旧森田銀行本店近くの駐車場についた。
まだ先輩達の車はついていないから車の中で先輩達が来るのを待つ。
いまの時刻は16:10。見終わったらだいたい17:00手前ぐらいか。
丁度良い時間になるな。
おっと、先輩達も到着したみたいだ。
「先輩、そろそろおりますか」
「そうしますか。うーん、疲れましたね」
車を降りたと同時に背筋をのばしている。
「長い時間車に乗ってましたからね」
そういい背筋を伸ばす。
「よし、じゃあ行きましょうか」
鈴木が少しはしゃぎながら先頭に立ち、それを中本が抑える。
その光景を皆ほっこりしながら見ているとすぐ目的地についた。
旧森田銀行、山田七五郎氏が明治時代に設計し三国湊が繁栄した証拠である西欧古典主義の建築物である。
そんな近代遺産に見惚れていると隣で先輩が膨れている。
「三谷くん、さなかに入りましょうよ」
「ちょ、ちょっとまってくださいよ」
先輩につよく手を引かれ中に連れて行かれてしまった。
もう少し見ていたかったのに…。
中に入るとそこは豪華な漆喰模様が広がっていた。
これはこれで綺麗だ。
「美しいな…」
ボソっとつぶやくとどうやら先輩の耳に入っていたらしい。
「私には一度も言ってくれたことないのに…」
「先輩なにか言いましたか?」
「いやなにも言っていないですよ」
うーん、なにか言っていたように聞こえたんだが…。
この調子でじっくりと中を拝見し終えると時間は16:50分になっていた。
「じゃあ丁度良い時間だし、そろそろ居酒屋の方に行くか」
四条先輩が皆を引き連れ車のところに戻り駐車場のところについた時、賢人にアイコンタクトを送る。
「すみません、忘れ物したのでとってきます!申し訳ないですが皆さん先行っててもらえませんか?」
「ああ、わかったが岡里はどうする?」
「あ、あーどうしましょうか…」
その時賢人が四条先輩に耳打ちしている。
「ま、それもそうか。わかった。岡里、悪いが勇人と一緒に向かってもらえないか?」
「はい、わかりました。私も2人のイチャイチャを見たくはなかったのでよかったです」
後ろから2人の先輩をからかう声が聞こえてくる。
「勇人、それじゃあ先に言ってるからなー!」
からかう声が聞こえ終わったあと賢人の声といくつかの自動車のエンジン音が聞こえてきた。
すべてのエンジン音が聞こえ終わったあと、すぐに車のところに向かう。
「先輩、すみませんお待たせしました」
「いえ、大丈夫ですよ。それじゃあ向かいましょうか」
「はい、そうしましょう」
車に乗り込みエンジンを掛け駐車場をでる。
さて、駐車場をでて坂道を下り分かれ道に出る。
居酒屋に向かうには福井市内に向かう必要があるからこの別れ道を右に曲がる必要があるのだが、ここを左に曲がり東尋坊の方向に向かう。
「え、ちょっと。どこ行くんですか?こっち方向じゃないですよ」
「はい、わかってますよ。少し行きたいところがあるのでついてきてください」
「え、ちょっと待ってくださいよ」
先輩の顔が本格的に焦っているのが見える。
申し訳ないが、サンセットビーチの横の道を飛ばし車を急がせる。
数分車を走らせ東尋坊についた。
「先輩、目的地についたので降りてください」
「え、ここって…」
周囲を見渡す。
「さ、こっちです」
駐車場料金を支払い、先輩の手をつなぎ引っ張る。
「は、はい」
すこし早歩きでタワーに向かいチケットを買いに行く。
「すこしここで待ってください」
「え、あ、はい」
先輩はまだ理解がすこし追いついていないようだった。
「すみません、三谷という者なのですが三ツ谷さんいますでしょうか?」
「ちょっとお待ちください」
受付嬢が後ろに下がり確認をとる。
「あ、おじさん」
「おお、勇人久しぶりだな」
後ろからダンディーな俺のおじさまがでてきた。
「昨日電話で話したことお願い」
「ああ、わかった。とりあえず三十分ぐらいはなんとかなると思う。てかこんな辺鄙な場所に来る人間はそうそういないが…」
最後の方、なにか悲しいことが聞こえたが、聞こえなかったことにしよう。
「ありがとうおじさん、こんどちゃんとお礼する」
「そんなことはいいから早く彼女さんのところ行ってやれ」
後ろの方を指差す。
「わかった」
「勇人、頑張ってこいよ」
力強く背中を押してくれた。
「先輩、上に行きましょうか」
チケットを手渡す。
「は、はい」
やはりまだいまいち理解が追いついていないようだった。
エレベーターに乗り展望台に向かう。
スマホを覗き時間を確認する。
まだ間に合う。
エレベーターが音と光で到着をしらせる。
「先輩、こっちです!」
手を引っぱり海側の方につれていく。
「はぁ、はぁ、間に合った」
展望台の海側にはちょうど日本海に沈みゆく美しい夕日があった。
「三谷くん、そろそろどういうことか説明してください」
少し困惑した顔ながらも、やや期待したような顔でこちらをみつめてくる。
その顔は夕日が差し込んでてとても綺麗だ。
「先輩、誕生日おめでとうございます。これ、俺からのプレゼントです」
カバンの中から前先輩と買い物に行った時に買ったネックレスを取り出す。
「ありがとうございます!これって、前からほしかったやつ…、ほんとにありがとうございます!」
そうだったのか。
たぶんこれ、斉藤さん仕組んだだろ。
「なんてお礼すればいいのか…。それにこれ高かったでしょ?」
「いや、値段とかは気にしないでください」
「しかし、ほんとになんとお礼をすれば…」
「では一つ、僕のお願いを聞いてください」
カバンの中からもう一つの小箱を取り出す。
その小箱を先輩の前にもっていく。
「せん、いや智咲さん」
「は、はい」
その小箱を見て色々悟ったのだろう。先輩の背筋がピンとなる。
「僕は智咲さんのことが好きです。普段見せてくれる何気ない笑顔が好きです。いつもの大人な雰囲気が好きです。時々見せてくれるドジなところが好きです。あなたの優しくも厳しいところが好きです。あなたのすべてが大好きです」
「は、はい…」
先輩の顔が真っ赤になっているのがわかる。
俺の顔も真っ赤になっているのだろう。
「そんなあなたと一緒に人生を歩んでいきたいです。世界一あなたのことを愛しています。僕と婚約してください」
小箱の蓋を開け、小箱の中が見え小箱に入っていた小さなダイヤモンドが埋め込まれたプラチナのリングが見えた。
智咲さんは嬉しそうな顔を浮かべながら涙を流しそうにしている。
「はい、よろこんで!」
瞬間、時がとまったように感じた。
嬉しさではち切れそうな思いだ。
「三谷くん、三谷くん、なにか反応してくださいよ」
笑顔を浮かべながら先輩が肩をさすってくる。
「は、はい。まだ現実だと思えなくて」
「それは私もですよ」
2人で笑う。
「それじゃあ、はめますね」
小箱の中から婚約指輪を取り出しそれを先輩の薬指にはめ込む。
「これから、よろしくお願いしますね!」
「はい、先輩!よろしくお願いします」
「もー、先輩って呼ぶのやめてください。これからは智咲ってよんでください。
それと、さきほどもらったネックレスをつけたいのですがお願いできますか?」
「わかりました。智咲さん」
呼び慣れない名前を言い顔が赤くなるのを感じる。
「ふふ、お願いしますね」
そういいまとめ上げていた髪を捲し上げ項を見せてくる。
そこに前から通したネックレスのホックの部分を持ってきてつける。
「つけましたよ」
「わかりました」
捲し上げていた髪をおろす。首につけていたネックレスに埋め込まれていたトルマリンが夕日の光を反射させ輝いている。
先輩が少し背伸びをし、襟を引っ張ってくる。
頬に温かい感触が伝わる。
「え、せんぱ」
「勇人くん、今日は最高の誕生日にしてくれてありがとうございます!」
いままでにみたことないほど可愛い笑顔を浮かべてくる。
一通りのことを済ませ展望台をあとにし下に降りるとチケット売り場の方からおじさんの笑顔が見えた。その顔はなにやら安心したような顔だった。
「勇人くん、手つなぎましょうよ」
「そうですね、つなぎましょうか」
そういい手をつなぐ。今回は前回と違い恋人つなぎだ。
このまま車に向かう。
車に乗って、東尋坊を出たあともしばらく手を繋いだままでいる。
「智咲さん、そろそろ手をはなさないと運転できないです」
「そうですか…」
残念そうな顔を浮かべる。
「また手はつなげますし、このあとも繋げられますから」
なんとか残念そうな顔をはらす。
「そう、ですね。またつなげますし!」
先輩の顔が笑顔に戻った。
「ところで勇人くん、この2つありがたいのですがいったいいくら使ったんですか?」
「いや、値段は気にしないでくださいよ」
「いやダメです。将来の妻となるんですから家計の管理はしっかりとしないと」
「わかりました。実はゴニョゴニョ万円つかいました…」
「そ、そんなにですか!?」
先輩の驚いた声が車内に響く。
「これからはしっかりと報告と相談してくださいね!」
そういいながらも指輪とネックレスを見つめている。
どうやら気に入ってもらえているらしい。
そのうち疲れが一気に来たのだろうか。うとうとしだしついにかわいい寝顔を浮かべてしまった。
この綺麗な寝顔を守れるような男になろう。
そうあらためて決心することとなった。
しばらく車を福井市方面の方へ走らせること約40分。
10分ぐらい遅刻して居酒屋についた。
どうやら車が停まったことで智咲さんも目が冷めたらしい。
「居酒屋につきましたよ」
「うーん、まだ眠たいです…」
「はやく起きないとイタズラしちゃいますよ」
「ふふ、それはまたこんどしてもらうとします」
笑顔で扉を開け車から出ていき、居酒屋の方へむかっていった。
俺も車鍵を掛けそのあとを追う。
「いらっしゃいやせ」
居酒屋の戸を開けると顔見知りの店員が何人かいた。
「他の方たちは上のいつもの部屋にいますよ」
「わかりました。ありがとうございます。智咲さん、さきにどうぞ」
「ではお言葉に甘えて」
智咲さんに先に階段を上がってもらう。
「コート、脱ぎますか?」
「あ、そうしますね」
智咲さんから脱いだコートを預かる。
コートに隠れていたネックレスが見え、光を反射している。
「コート、私持ちますね」
「わかりましたよ。あ、この部屋ですね」
コートを智咲さんに返し、中から先輩達の声が聞こえる個室の襖を開ける。
「すみません、遅くなりました」
「おう、2人ともきたか。よしみんな今日の主役がきたぞ」
部屋の中はみんな今日の主役である智咲さんを待っていたようでテーブルの上にはなにも載せられていなかった。
「じゃあ、飲み物頼もうか。あ、智咲コートはそこのハンガーのところに掛けときな」
「わかりました」
「勇人、お前はこっちにこい」
賢人の方向をみるとそこにはニヤニヤした顔の賢人がいた。
「おう、先輩のあのペンダントお前が渡したのか?」
「そうだけど、どうだ…?」
智咲さんの方を見るとみんなの飲み物を頼んでいる小谷先輩の右側に座っている。
「どうだって、よくにあっていると思うが」
「ならよかった」
「お前、顔すごいにやけてるぞ。まあいい。これからしっかりとお付き合いをお願いしていけよな」
「あ、あー。あのな、そのことについてなんだがな…」
その時智咲さんの方から小谷先輩の悲鳴が聞こえた。
「智咲、ちょっとその薬指につけてるものって!」
「あ、これですか?勇人くんから先程もらった婚約指輪です//」
惚気顔でこの指輪を誰からもらったかを話している。
少しずつ周りに話していくつもりだったけど、こうなってしまってはしょうがない。
しばらくの間この場が静粛に包まれたが、すぐにその静粛は破られ皆それぞれ驚きの声を上げていた。
特に衝撃を受けていたのは小谷先輩と賢人で、
「三谷君、たしかに私は君の背中をおしたけど順番ってものをわきまえなさいよ!」
「そうだぞ賢人、たしかに俺らはお前と先輩がくっつくようには仕向けたがな。というか少しぐらい相談してくれよ!」
2人がこんなことをずっと言い続けている。
「とりあえず、今日は祝いの席だな。よし今日は俺が全部出してやるとするか」
四条先輩が笑いながら言っているのを
「ちょっと、あんたそんなに金持ってきてないでしょ」
「いや、カードを使えばなんとかなる、はずだ」
「ちょっと、もう私も半分くらいはだすよ。今日はかわいい後輩2人の晴れの日だしね。
さて、主役のお二人さんはほらこっちにきな」
牧野先輩がすこしなだめながら、俺と智咲さんを真ん中の席に持ってくる。
「勇人、あとから今日のことというか今日までの準備の話を詳しく聞かせてもらおうか」
賢人がニヤニヤしながら言ってくる。
「ああ、わかったよ」
すこし笑いながら答える。
「それとな、おめでと」
「めずらしいな、お前が素直に祝うなんて」
「うるせ、友人の幸せぐらい素直に祝うよ」
お互いにからかいあい、俺は牧野先輩が用意した真ん中の席に向かっていく。
隣には智咲さんが座っている。手を地面に置くと智咲さんが手を重ねてきた。
俺はこの人とこの先を歩んでいくことになる。不安もあるがいまは考えないでおこう。
隣をみる。いまはこの笑顔を目に焼き付けて置くとする。
読んでいただきありがとうございました。
感づいている方もいらっしゃると思いますが、このあと岡里智咲さん視点が始まる予定です。
一応後日談的なものの構想もあるのですが、本連載の『人魔大戦記』次第でどうなるか決める予定です。