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恋愛短編  作者: 来夢
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君と初めて会ったとき

今年の冬は寒かった。空はどんより曇り空。夏の青が懐かしい。

僕が一人になって初めての冬が来た。一人がこんなに寒いことを知らなかった。今までの冬が懐かしい。

暖かさを求めて僕は街をさまよった。でも、暖かい場所は見つからなくて僕はやっぱり一人だった。そんな時僕は君に出会った。

早めの夕ご飯だった。二つ隣の席に座った君が僕と同じ飲み物を注文していたことを覚えている。漫画のような出会いなんてよく言うけれど、その時は全然そんなこと思わなかったんだ。先に食事を終えた僕は会計をしようと立ち上がった。その時僕の腕が鞄に引っかかり、中身をぶちまけた。君はそれに気づき立ち上がって一緒になって拾ってくれた。「すみません」「いえいえ、これで全部ですか?」「はい、ありがとうございます」拾い終わると君は席に戻った。君は肘でグラスを倒し、服を汚してしまった。そういえばこのころから君はおっちょこちょいだった。すぐに店員さんがやってきて、布巾を渡していた。僕はその姿をほおっておくことは出来ずに「大丈夫ですか?」と話しかけた。「あ、あははー、ドジしちゃいました、大丈夫ですー」君は誤魔化すように笑った。その時少しだけ魔が差したんだと思う。寒い部屋に帰りたくないなと少しだけ思ってしまったんだろう。「なんだか僕のものを拾ってくれたことが原因みたいですし、よければ一杯おごりますよ」こんなこと普段なら言わない。言ってすぐ後悔した。「あはは、すみません、見ず知らずの人にこんなこと言われたら困りますよね」「あ、えっと、ありがとうございます、よければお言葉に甘えていいですか?」驚いた。自分から言い出したのだが、まさか了承するとは思っていなかった。あとから聞いたら、君もこの時どう返していいかわからずパニックになっていたそうだ。でも、了承してくれてよかった。これが君との出会いになったんだから。僕は君の隣に座りなおした。「えっと、何飲みます?」「じゃあこれで」さっき飲んでいたものと同じものを指さす。「すみません、これ二つで」注文を終え、何を話せばいいのか話題を探したが思いつかない。こういう時はまず挨拶だろう。「初めまして、田中と申します」「あ、初めまして、私は川村といいます。」君は戸惑ったように自己紹介をした。「ここで会ったのも何かの縁だと思って、一杯分おつきあいください」少し道化めいた口調で話し始める。「ここはよく来るんですか?」「たまにですね、そちらは常連さんですか?」「いえ、初めて来たんですよ、店の雰囲気がいいなと思って」飲み物が運ばれてきた。話は進んでいく。結論から言うと、君との話は楽しかった。きっと君も同じように感じてくれたのではないかと思う。帰り際に、来週も同じ場所で会えたら嬉しいと話した。もし来週会えなくても、それは君の判断だ。

その後の一週間は心が浮足立っていた。君と話す話題になると思うと、いつもの毎日すらも楽しくなる。会えないかもしれないという不安は胸の内にしまっておいた。君に会える日が近づくのが嬉しくて、部屋に帰って布団に入ることを寂しいと感じることが少なくなった。

そして君に会ってから一週間がたった。君が来るかはわからないけど、なんとなくそわそわして落ち着かなかった。この前と同じ時間に行って、普通に食事をした。30分ほどすると君がやってきて、僕は最初それに気が付かなかったのだけど「相席いいですか」と聞かれて、君の顔を見て嬉しくなった。「一週間ぶりですね」「今週どうでした」君との会話は今回も楽しかった。よかった、嫌われてはいないみたいだ。「よかったら次は別の店に行きませんか」と君に言われた。とてもうれしかった。そして僕らは互いの連絡先を手に入れた。来週も会える、そのことが寂しさをやわらげてくれるのを感じた。

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