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「勇気? サラはすごく勇気があるよ。私といっしょにサン=タクロッスから子供たちを取り返したんだから」
リレミスが口を挟んだ。
「ん? 何の話? タクロッスって誰だろう? 海外のインフルエンサーかな?」
真一が首を傾げる。
「サラは立派な勇者だもんね!」
リレミスが笑顔でサラに抱きついた。
「うん」
サラが頷く。
「そうだよね…私は勇者。あんなに頑張れたんだもん」
サラが真一に顔を向けた。
「菊正宗さん」
「ん?」
「私、新しいお仕事、やってみます! ぜひやらせてください!」
サラのやる気が漲る表情に、真一も瞳を輝かせる。
「本当!?」
「はい!」
「そっかー、良かったー!」
真一がスマホを取り出す。
「それなら正式にオファーを受けるね! こりゃ忙しくなるぞー!」
そう言うと真一は部屋を飛び出していった。
「あの人、面白い」
リレミスがクスクス笑う。
「それじゃあ、私はそろそろ吸血鬼の城に戻ろうかな。マスターとアーシアお姉ちゃんが帰ってきてるかもしれないしね」
「そか…そうだよね。何だか寂しい」
「この世界の場所は覚えたから、またいつでも会えるよ。私の魔法力はすごいから。簡単に行き来できちゃう」
「そなんだ! それなら寂しくない」
「ウフフ。じゃあね、サラ」
「さよなら、リレミス」
「バイバイ」
「またね」
「うん、またね」
リレミスの身体が半透明になり。
やがて消えていった。
部屋にはサラ1人だけ。
廊下から真一が電話している声が響いてきた。
カメラマンの要求に応え、颯爽とポーズを決めるサラ。
その姿は威風堂々として、自信に満ち溢れていた。
スタジオの脇でその様子を見つめる真一が、しきりと感心している。
「すごいな、サラちゃん。ホントに乗りに乗ってる。特にあの娘…リレミスちゃんといっしょに居たのを見た日から変わったなー」
顎に手を当てて何度も頷く。
「前から撮影中の非凡なカリスマ性は感じたけど、それがどんどんパワーアップしてる。まだまだ伸びていきそうだ」
カメラマンが撮影を止め、サラと写真のチェックに入った。
2人とも満足げだ。
チェックが終わり、スタッフが休憩を告げる。
真一がサラの傍にやって来た。
「いい調子だね」
「はい」
サラが笑顔で頷く。
手応えを感じていた。
「そうだ!」
真一が急に手を叩く。
「サラちゃん、この前のリレミスちゃん! あれから全然連絡ないけど…モデルには興味ないのかな?」
「たぶん、ないと思いますよ」
「そっかー。もったいないなー。彼女、めちゃくちゃかわいいのに」
「あはは」
サラが苦笑いで誤魔化す。
「リレミスは悪魔なんです」とは言えない。
(リレミス…どうしてるかな? 元気かな? マスターやお姉さんと会えてればいいけど)
サラの頭の中に、リレミスや村人たち、サン=タクロッスとトナカイたちが思い浮かんだ。
(また会えるかな?)
すると一瞬。
耳元で、リレミスの鈴を鳴らすようなかわいらしい笑い声が聞こえた気がした。
おわり
最後までお読みいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝でございます(´。・д人)゛
ご協力いただきました九曜さんと黒木さん、本当にありがとうございました(☆∀☆)