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サラが叫ぶと同時に引き金を引いた。
銃から発射された電撃がタクロッスを直撃する。
「ギャーーーッ!!」
タクロッスが絶叫し、その場に倒れた。
自由になったサンタ服姿のかわいい子供たちが、サラとリレミスの傍に駆け寄る。
「やったね、サラ!」
リレミスが笑った。
「うん!」
サラも満面の笑みで返す。
2人はハイタッチした。
子供たちも泣き止み、笑顔を取り戻している。
「さーて」
リレミスが唇をペロリと舐めつつ、動けなくなったタクロッスに近づいた。
両腕を組み、仁王立ちで見下ろす。
その両眼がギラギラと光っている。
「どんなお仕置きをしてやろうかなー」
リレミスのいかにも「ザ・悪魔」という表情に、タクロッスはおろかサラも震えた。
「ちょっ、ちょっと何するつもり?」
「私は敵には容赦ないって有名なの」
リレミスがニヤリと笑う。
と、突然。
城の太い柱の陰から、一頭のムキムキではないトナカイが飛び出した。
タクロッスを庇うようにリレミスの前に立ち塞がる。
「は? 何、この赤い鼻の奴は?」
リレミスが首を傾げる。
「私の邪魔をするつもりじゃないでしょうね?」
リレミスが右手の鞭をふりかざすのをサラが「待って!」と止めた。
トナカイの顔を見つめる。
「もしかしてタクロッスにも何か事情があるのかも」
「えー。ここまでやっといて、今さら言い訳できるかなー?」
リレミスが呆れた。
「タクロッスの話を聞けばいいのね?」
サラの言葉にトナカイが頷く。
倒れたタクロッスの横に片膝立ちで跪いた。
リレミスが動けないタクロッスの背中をブーツでグリグリと踏む。
「ほらほら、どうしてこんなバカなことしたのか、言ってみな! 聞いてやるから」
「うぅ………」
タクロッスが呻く。
「早く喋りなよー。あれ? こいつこういうのが好きで嬉しがってる?」
「リレミス!」
サラが怒る。
「はーい」
リレミスがタクロッスから足を退けた。
「どうしてこんな悪さをしたの?」
今度はサラが訊く。
「お、俺は…」
タクロッスが、たどたどしく語り始めた。
「物心ついた時から独りだった…周りに居るのはトナカイばかり…そりゃあ気のいい奴らだが、言葉は話せない…だからものすごく寂しくて…クリスマスプレゼントを貰って喜んでる子供たちが…羨ましくて…腹が立ってきたんだ…それでトナカイたちを魔法で操って…」
「「ええーー!?」」
サラとリレミスが同時に声をあげた。
「原因は寂しいからなの?」
サラが呆れる。
「それなら余計、こんなことしちゃ駄目じゃない!」
「とんまな奴」とリレミス。
「す、済まん…俺は生まれてから一度もクリスマスプレゼントを貰ったことがなくて…つい悔しくて…」
「なるほど…でもそれが原因なら、解決するのは簡単だよ」
サラが笑いだす。
「え?」
タクロッスが戸惑った。
「ね、リレミス?」
サラがリレミスに目配せする。
「確かにねー」
リレミスが頷く。
傍らに出現した異空間の穴から、クリスマスケーキを取り出した。
「「タクロッス」」
サラとリレミスが声を合わせる。
「おお?」
「「メリークリスマス!」」
2人が満面の笑みでタクロッスにケーキを差し出した。