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「その武器があればサン=タクロッスも必ず倒せますのじゃ。どうか子供たちを取り返してくだされ!」


「あー…子供たち…子供たちが捕まってるのは大問題だよね…」


 サラは眉をしかめた。


 子供を拐われた村人たちの苦しみは言葉にし難いものがあるだろう。


 そんな暴挙は許せない。


 しかしモデルの自分に悪者と戦い、子供たちを救出できるだろうか?


 自分が銃を撃ちまくるシーンを想像してみるが。


「無理…やっぱり無理! 私には出来ませ」


 そこまで言いかけてサラが止まった。


 村人たちの必死な眼差しと眼が合ったからだ。


 もしも本当にこの武器を扱えるのが、自分だけだとしたら。


 子供たちを救える者が他に居ないとしたら。


(あー…どうしよう…戦うなんて…怖すぎる! でも私じゃないと…子供たちが…)


 サラの胸中を葛藤(かっとう)が渦巻いた。


 そこに村人たちが畳みかける。


「勇者様!!」と口々に呼び、頭を床に擦り付けた。


 子供たちの母親らしい女性たちの瞳には涙が光っている。


「あー…は、はい…それじゃあ…とりあえず、ちょっと…見に行くぐらいなら…」


 サラは渋々、頷いていた。




「どうしてこの格好なの!?」


 サラが村長に訊いた。


 仕方なく子供救出ミッションを承諾した後、何故か別の服に着替えるよう指示された。


 女子のかわいらしいサンタ服と黒タイツとガーターベルト、赤いブーツ。


(え?)


 頭の中が疑問でいっぱいになったが、村の男性陣が全員部屋から出て、残った女性陣たちに半ば強引に着替えさせられてしまった。


 サンタ帽にサンタ服、両脚に黒タイツ、右手には伝説の銃、そして身体の周りを2匹の青い蝶が漂う。


 耳元には元髪飾りの青い蝶が止まっている。


 それから何の説明もなく外へと連れ出され、夜の闇を松明(たいまつ)の灯りを頼りにここまでやって来た。


 前方には巨大な禍々しい雰囲気の城が月明かりに浮かんでいる。


 村長の言っていた、かつて吸血鬼たちが住んでいた城。


 今はサン=タクロッスが占拠し、拐われた子供たちもあの中に居る。


 開かれた城門まで来た村人たちが足を止めた。


 全員がサラを見つめる。


 そこでサラの口から出たのが「どうしてこの格好なの!?」であった。


「サン=タクロッスは城に魔法の結界を張っております」


 村長が答えた。


「その格好でないと中に入れないのですじゃ。わしらの分はこの前の戦いでトナカイたちに破られ、残っておるのはその服だけ」


「ええ…」


 サラが顔をしかめる。


 そして、ふと気付いた。


「ええー!? ちょっ、ちょっと! じゃあ私1人だけで行くの!?」


 村人たちが頷く。


「こ、この中に入って!? サン=タクロッスと戦うの!?」


 再び村人たちが頷く。


「嘘…」


 サラが青くなる。


 激しい恐怖が襲ってきた。


(そんなの…ハリウッドのアクション映画の主人公じゃなきゃ無理だよ…)


 考えただけで身体が震えてくる。


「あ…あの…」


 眼を伏せて小さな声を出した。


「やっぱり…私には無理です…」


「大丈夫ですじゃ、勇者様!」


 村長が励ます。


 その表情はサラを、否、勇者を信じきっている。


「その武器があれば必ずサン=タクロッスは倒せますのじゃ。子供たちを助けるため、勇気をお出しくだされ!」


「え? 勇気を…」


 サラの頭の中に突然、菊正宗真一の声が甦ってきた。


「勇気を出して前に進めば必ず上手くいくから!」


 そう真一は言っていた。


 サラに必要なのは勇気だと。


(そうだよね…もう子供たちを救えるのは私しか居ない…勇者の武器だってある…勇気を出さないと!)


 サラは決意した。


 すると身体をがんじがらめにしていた恐怖が不思議と消えていく。


 サラの表情がキリリと引き締まった。


 尋常ではないオーラが溢れてくる。


 それを見た村人たちが「おお!」と盛り上がった。


「子供たちは私が助けます!!」


 サラが力強く宣言した。










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