表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/129

90

「――……?」


 うずくまるように玄関に座っていたわたしだが、ふと、なにか物音がしたような気がして、顔を上げる。

 ……店の方から?

 施錠はしっかりしている。無音で侵入者がくるなんて――いや、ついさっきまで、わたしは心ここにあらず、と言わんばかりに呆然としていた。なにか、不審な物音を聞き逃していたとしてもおかしくない。


 わたしはそっと立ち上がり、靴を脱いで玄関から動き出す。ゆっくりと、足音を立てないように気をつけながら。

 気のせいだったらいいけれど、誰かいたら普通に危険だ。


 夕方に見てしまった赤い光景が、わたしの頭の中で蘇って、心臓がバクバクとうるさいくらいに暴れた。変質者がいたらどうしよう。走って逃げて、透くんの家にまでいけるかな。

 変質者がいたら気がつかれないように、と細心の注意を払って、わたしはゆっくりと店へと繋がる扉を開ける。


「――……」


 ひとまず、店には誰もいない、ようだ。少し覗いただけだから、死角になるような場所に隠れられていたら分からないけれど、パッと見た限りでは人の気配はない。

 気のせいか、とわたしはきょろきょろと店内を見ていると、つい、展示用の魚提灯が目に入る。照明が消えて真っ暗な中、そこだけが明るいので、意識がそっちに向いてしまうのだろう。その魚提灯の中には、魚提灯によく使われる陽光り(ひびかり)メダカが三匹ほど泳いでいた。壁に陽光りメダカが泳ぐ影がちらちらと映る。


 その水提灯を見て、わたしは姫鶴から、縁提灯を作成する依頼を受けたときを思い出していた。


 ――この時期は学園祭があるのよ。……本編だと最初の大きなイベント扱いね。


 今回の文化祭は、序盤のイベント……らしい。それならば、攻略キャラがあんなにも死にかけるのは、正規ルートじゃないはずだ。

 玄関から動いたからか、ようやく、わたしの頭は少しずつ働き始めた。


 実際はどうか知らないけれど、攻略キャラが死ぬ、なんてイベント、ストーリーの盛り上がり方から考えても、普通なら最後のほうに持ってくるものだろう。

 となると、どこかで起きた齟齬による、本来ないはずの事件、ということか……?


 それに、気になるのは、頭痛を引き起こした時に見えた、あの惨状と似た光景。いや、見えたというよりは、思い出した、というべきか。真っ赤に染まる血の心当たりと言えば、わたしがここに来る前、事故で死んだときのことだが、それにしては、地面がアスファルトじゃなかったような……?


 ――トン。


「……っひ!」


 突然の足音に、わたしは小さく悲鳴を上げてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ