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 それにしても、こんな少し離れた間に絡まれるなんて……。昼間は、いろいろな万道具にはしゃぎまくってはぐれて迷子になるし、その後は食べたいがままに屋台で物を買って結局食べ切れずに透くんに食べてもらい、挙句の果てにこれ……。

 だいぶ迷惑をかけてしまったな。透くんを振り回しっぱなしである。絶対面倒な奴、って思われたよね。


 もう少し、身の回りのことに興味を持つべきなのかもな。万道具以外で。もっと人間関係を円滑にできるようなスキルを磨いていれば、さっきのナンパだって透くんに助けてもらわなくても、自分でなんとかできたかもしれないし。

 そう思ったところで、じゃあどう頑張れば興味を持って成長できるのか、っていう話になってしまうのだけど。


 少なくとも、周りを見るべき、後先を考えるべき、ということなのはなんとなく分かる。

 はぐれた原因は万道具しか見ていなかったから透くんがいないことに気が付かなかったわけだし、屋台に夢中になって結構な量を買い込んでいることに気が付かなかったから食べ切れないなんて事態になったわけだし。ナンパだって、チャラそうな男がいることに気が付けていれば、そもそも話しかけられることもなく、断ることに頭を悩ませることもなかったはず。


 ――周りを、ねえ。

 そう考えて、ふ、と顔を上げると、透くんの顔が目に入った。


「――……万結さん? 大丈夫ですか? 怖かったですよね」


 わたしのことを心配そうに見てくる透くん。考え込んだことによって口数が減ったから、あのナンパ男への恐怖がぬぐえていないと思ったらしい。

 怖かった、と言えば確かに話が通じなくて怖かったけれど――。


「……ううん、大丈夫。透くんが来てくれたし」


 そう言うと、透くんは少し頬を染めて、照れたように目線をそらした。


「……ありがとう、透くん」


「い、いえ。このくらい、当然ですから」


「――うん」


 顔が赤いまま、笑顔を作る透くん。その笑顔からは、わたしへの好意が滲み出ていて。

 彼のことをしっかり見ていれば、もっと早く気が付いたかもしれない。透くんから、わたしへの好意が、人間としてのそれだけでないことに。


 本当にわたしは、万道具以外、目に入っていなかったんだな、と思い知らされた。今更気が付くなんて。こんなだから、透くんと一緒にいたのはわたしの方が長いのに、姫鶴のが先に、透くんのことに気が付くわけだ。


 ――……なお、空気を読んだのか、いつの間にか姫鶴が消えていて、それに気が付かなかったわたしは、一つのことに夢中になると周りが見えなくなる悪癖が治るのは、まだまだ先のことだな、と思ったのだった。

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