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 無事に透くんと合流できてから、わたしは透くんに「どこか行きたいところある?」と声をかけた。

 万道具の展示はある程度見ることができた。そりゃあ、一般学の併設校に行きたいな、とか、二周目もありだな、とか、思うところはいろいろあるけれど、わたしの興味のある場所ばかりに行かせてもらった自覚はあるので、そろそろ彼の要望も聞くべきだと思うのだ。

 といっても、万道具の専門学の学園なので、万道具の展示以外だと、外の屋台か中の休憩所のどちらかになってしまう。結構歩いたから、休憩でもいいと思うけど。


「そうですね――あ、万結さんの好きなイカ焼き売ってますよ。食べに行きましょう」


「わたしはいいけど……」


 わたしの好物を食べに行くのでいいのか? もっと自分の好きなように行動すればいいのに。ちなみに、『わたし』の好物がイカ焼きや焼き魚を始めとした、海鮮物の焼き物であって、決して『ヒロイン・万結』の好物がイカ焼きなわけではない。いや、正確には知らないけど。乙女ゲームのヒロインだったら、もっと可愛い感じの食べ物が好きだと思う。


「透くんが食べたいものでいいんだよ?」


 思わず聞くが、透くんは「大丈夫です」と笑う。


「僕は好き嫌いありませんから。なら、万結さんが好きなものでいいでしょう?」


 透くんが嫌いな食べ物がないのは知っていたけど、好きな食べ物がないとは思っていなかった。まあ、彼がいいというならいいのかな。そこまで遠慮している雰囲気もないし、逆に透くんのしたいように、って固執するほうのが困りそうだ。


「じゃ、行こ」


 わたしは透くんの手を取って握る。「えっ」と彼が声を漏らしたのが聞こえたが……何か変だっただろうか?


「どうしたの? 昔はよく一緒に繋いだじゃない」


 わたしは首を傾げながら透くんに聞く。


「で、でも、もう、それなりの歳ですし……」


「それなりの歳だから手を繋がなくたってはぐれないって思ってたけど、さっきはぐれたでしょ」


 この歳で迷子防止に手を繋ぐより、迷子案内で呼び出しを食らう方が恥ずかしい。

 それに、わたしから手を握っておけば、さっきみたいに、透くんが手加減を間違えて、わたしの手を握りつぶしそうになることもない。

 名案だと思ったのだが……。


「わたしと手を繋ぐの、嫌?」


「いや、というか……、その……。――……い、いえ、大丈夫です。分かりました」


 何やら歯切れが悪い透くん。男だとやっぱり、もういい歳なんだから迷子防止で手をひっぱらられるのは恥ずかしいんだろうか。迷子案内で呼ばれる方が嫌、と思うのはわたしだけ?


「嫌なら離すけど」


「だ、大丈夫ですってば!」


 透くんは急に声量を上げる。本当に大丈夫なのかな……。

 まあ、彼が大丈夫って言ったのを信じるしかない。


 わたしたちは手を繋いで、そのまま屋台がたくさん出ている方へと向かった。

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