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 そうだよねえ、わたし、万道具に夢中になって透くんのこと置いて行っちゃったもんね……。わたしから迷子になっていったのに、のんきにのこのこ歩いていたら怒るよねえ。

 わたしが薄暮の森で迷子になったときだって、心配かけて怒られたくらいだもん。流石に薄暮の森と違って、命の危機はないけれど、これだけの人数がいたら変な人に絡まれる可能性だってあるだろうし。


 しばらく歩いて、表側に出た。人混みの声が大きくなって、小さな声での会話が難しくなる前に、わたしは透くんに声をかけた。


「……置いて行ってごめんね」


 わたしは透くんの手を軽く握り返して謝って――手の感覚が鈍いことに気が付いた。


「わ、わたしが悪かったけど、手を握りつぶすだけのだけは勘弁してくれないかな……」


 透くんが握っているのは、わたしの利き手とは逆だけれど、万道具の制作・修理には両手を使う。片手だとほとんどの万道具は作れなくなってしまう。


「え……あ、わ、すみません!」


 透くんが、焦ったように手をパッと放す。

 透くんが握り込んでいたわたしの手には、うっすらと赤く跡が残っていた。男の人の握力って凄い……。

 その跡を見ながら、わたしはゆっくりと手を握ったり開いたりする。……反応は鈍いけど、完全に駄目になったわけじゃないみたい。

 ふ、と透くんの顔を見れば、それはもう、この世の終わりのような顔をしていた。


「す、すみません……! そんな強く握るつもりはなくて……!」


「動くし大丈夫だよ。痣だってすぐ消えるだろうし。君を置いていったわたしが悪いからねえ」


 万道具に夢中になって、透くんを振り回すことは予想していたけれど、流石に彼を置いていってしまうことだけは考えてもみなかった。……今思えば、普段のわたしの行動を考えたら十分にあり得る可能性だったわけだが。


「一応、集合場所決めておこう。ええと……あ、そうだ。もし次はぐれて相手が見つからなかったら、あの時計のところに集合ね」


 わたしは目についた時計を指さす。学校や公園中によく立っているタイプの時計だ。


「これなら次もう迷子になっても平気だね」


 わたしが言うと、「そう……ですね」と透くんは疲れたような雰囲気で笑った。


「い、いや、迷子になるつもりはないよ!? 念のため、ね?」


 今度ははぐれるほど万道具に夢中になることはないだろう、流石に。……多分、きっと。

 わたしが慌てて弁解すると、透くんはつられたように笑ってくれた。本当に、気持ちだけは、はぐれないようにって思ってるのに!

 ……まあ、笑ってくれるならいいか。

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