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 まあ、この生徒数で一緒の研究グループになる方が奇跡的だよね。ゲーム内なら、シナリオの都合上、調整されるものだろうけど。

 そうなると、この世界は本当にゲームによく似た別世界なのだと思い知らされる。……いや、ヒロインと好感度の高い攻略キャラが一緒のグループになるとは限らないけど。


「あーあ、適当に抜け出して姫鶴のところに遊びに行こうかな」


「こら、駄目だろ」


 こつん、という可愛い表現ではなく、がつ、と結構強めに詩黄の頭を叩くのは、いつの間にかやってきていた赤希だった。拳骨を落とされた詩黄は、頭を抱えてうめいている。


「全く、ちょっと様子を見に来てみれば……」


 呆れたように言う赤希。見た目に反して、案外真面目なのかもしれない。


「……ちょっと抜けるくらい、いいじゃん! 湖黒は実行委員の巡回だし、どうせ赤希は解説員の巡回にかこつけて姫鶴のところに行くんでしょ」


「……ぐっ。お、お前な。兄を呼び捨てにするなっていつも言ってるだろ。あと、せめて湖黒には先輩をつけろ」


 図星だったのか、赤希の言い返した言葉は少しずれていた。ていうか、湖黒、先輩だったのか……。そう言えば、そんな説明、公式サイトにあった……かも? あったかな?


 それにしても解説員、とは?

 赤希も湖黒と同じように腕章をつけていたが、そこには『実行委員』ではなく、『解説員』という文字が書かれていた。

 わたしの視線が腕章に釘付けだったのか、赤希が何かに気が付いて、腕章を軽く引っ張った。


「解説員っていうのは、文字通り、万道具の解説をする係のことだ。その辺にいる解説員を引っ張ってくれば、万道具の解説をしてくれるぜ」


 美術館の音声解説みたいなものだろうか。万道具にも似たようなものはあるけれど……これだけの来場者だと、数を用意するのが大変なのかも。


「へえ、凄いですね。どんな万道具でもいいんですか?」


「勿論。今日の展示品は全部頭に入ってるからな。まあ、アンタに必要とは思わねえけど」


 思わず「えっ」と声を上げると、赤希は不思議そうな顔をして首を傾げた。


「アンタ、店持ちだろ。いまさら学生レベルの万道具の解説なんているのか?」


 それは……まあ、そうかもしれないけど、それとこれは別っていうか……。

 知識として知っていても、他人がどうかいつまんで万道具の説明をするのかは興味がある。でも、赤希からしたら、プロ相手に解説するようなもんなんだよね。やりにくいのかな。

 残念だな、と思っていると――。


「まあ、別に解説くらい、してもいいけど」


「えっ、本当ですか!? お願いします」


 折角やってくれるというのでお願いすれば、「嘘でしょ、信じらんない」という詩黄の声が聞こえた。……今更説明されないと分からない奴が店を開いている、とでも思われたのかな。


「いや、わたしだって解説の一つや二つ、できますよ! でも、他人の説明にも興味があるっていうか」


 反論すれば、「そうじゃなくて」と否定された。どういうことなんだろう。


「……かわいそうな奴」


 詩黄にしては珍しく同情的な声。わたしの前だと、いっつもつんけんしてるか、姫鶴に甘えているかのイメージしかない。

 呆れたような溜息を吐く詩黄の目線の先には透くんがいたことに、このときのわたしは気が付かなかったのだった。

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