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 まだ巡回する場所が残っている、という湖黒と別れ、わたしたちは校舎へと向かう。


「後夜祭ステージだって。行く?」


 質問の体を取っているが、音響や照明関係の万道具が見たいので、わたしは一人でだって見に行くつもりだ。ステージで使われるような大型の万道具って、個人店には注文が来ない。ああいうのは企業がやるものなのだ。わたしだけじゃなく、祖父が引き受けているところを見たことがない。

 まあ、実際、歌劇とか、映画とかで見る限り、あんなもの個人で作れるとは思わないけど。いくら『喪ルケミスト』に分類され、免許皆伝だったわたしでも作れる気がしない。技術はあったって、大がかりな一人で作るのが大変な万道具は、物理的に製作が難しい。


 ゲームの中では、多少のものは作れたけれど、前世での家電や道具類以上のものを万道具というアイテムに頼っているこの世界で、ゲームに収録されていたほんの数種類なわけがない。あれは個人で作れる、最小単位だったに違いない。

 透くんも、わたしが行く気満々なのが分かっているようで、仕方ない、とばかりに「僕も行きます」と同意してくれた。わあい、楽しみ。


「じゃあ、とりあえず端の教室から研究展示を――わっぷ」


 後夜祭の約束も取り付けられたことだし、さっそく校舎内の展示を見に行こうとして、透くんの方へ引き寄せられる。


「危ないですよ、展示が楽しみなのも分かりますけど、周りを見ないと人にぶつかります」


「う、うん。ごめん……」


 わたしが先ほどまでいた場所に、少し遅れて人が通る。確かにあのまま進んでいたら、今通った人と確実にぶつかってしまっていただろう。

 ちゃんと見ていなかったわたしが悪い、んだけど……。


 ――近い!


 腕を引っ張るのではなく、肩から抱き寄せるようにして引き寄せてくれたので、透くんとの距離がかなり近い。こんなに密着することって、なかなかない。それこそ、薄暮の森で迷子になって、彼に心配をかけてしまったときくらい。


「――どうかしました?」


 透くんはきょとんとして、わたしに問うてくる。今、距離が近いのとか、意識してないみたい。


 ……や、やっぱり、わたしを異性として意識してるって、勘違いじゃない!?


 ちょっとの隙を見つけて、わたしは誰に言うのでもなく、心の中で叫んだ。

 でも、イマジナリー鶴姫が、わたしの心の叫びに、そうね、と納得してくれないのは、わたしがもはや勘違いじゃないのかも、と気が付いてしまったからかもしれない。

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