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がやがやと賑やかな人並。
すれ違う人たちは誰もが楽しそうで、笑顔にあふれている。何処へ行こう、だとか、あれ楽しそう、だとか、そういった客の雑談に加えて、時折、出し物への客寄せの声が目立って聞こえた。
ゲームの世界だろうが、和風ファンタジーで前世とは違う場所だろうが、学園祭、というものは案外どこもそう変わらないのかもしれない。前世の学校で催された文化祭も、大体こんな感じだった。多少自由度は増しているかもしれないが、それはゲームの世界だからってだけじゃなくて、単純にわたしがかつて通っていた学校より緩いだけなのかもしれないし。
わたし自身は、前世の学園祭であまりはしゃぐタイプではなかったのだが、今日は特別。万道具の研究発表や展示品があるらしいから、ずっとわくわくしている。
家を出る頃の緊張感はどこへやら。すっかり文化祭を楽しみ始めている。
それは透くんも同じようで、妙にテンションが高かった。わたしと違って、そこまで万道具に興味がある人に思えないから、多分、こういう場所が好きなんだと思う。
わたしと一緒だから、っていうことは――ないない!
わたしは、ふと浮かんだことを思い切り否定する。姫鶴に鈍感だと言われて、徹君のあの笑顔を見てしまって、妙に意識してしまうけれど、今日は万道具を見に来たんだから。デ、デートじゃないんだから。
そう、思っていたのに――。
「ね、あの人恰好よくない?」
「えー、でも女の人と一緒にいるよ? 彼女持ちじゃん」
「残念、一人だったら声かけようと思ったのにー」
――そんな声がわたしの耳に届いてしまった。
攻略キャラに比べてしまえば地味ではあるが、透くんの顔が整っているのは事実。なんとなく周りに耳を傾ければ、透くんにきゃあ、と黄色い歓声を上げている女子がちらほらいることに気が付いた。学園祭に夢中の彼は全然気が付いていないようだけど。
なんだかいたたまれなくなって、わたしは思わず横に垂らした髪をいじる。
ま、回りからだと恋人同士に見えるんだ……。
わたしの脳内姫鶴が、「だから言ったでしょ」と誇らしげに言っている。いや、だからまだ、そうと決まったわけじゃないって。
そんなことを思っていたものだから、「こういうの、いいですね! 店長」と、振り返って笑顔でわたしを見る透くんをまっすぐ見ることができなかった。
確かに、この笑顔はそれなりに好意を向けている人へのものだ。それが恋か友情か、それともただの信頼かはわからないけれど、一定以上の感情があるのは確か。年頃の男が年頃の女へこんな笑顔をしていたら、そりゃ、確かにはたから見れば……。




