表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/129

59

 ――そして、文化祭当日。


 しつこいくらいに姫鶴に念を押されていたわたしは、姫鶴に選んで貰った服を着て、姿見の前に立っていた。

 鏡に映るわたしは、普段からは考えられないような恰好をしている。立ち絵だったら、非常に作画コストが高くなっているだろうな、と思わずにはいられないほど凝った服。それに合わせて、普段のお出かけメイクより手を入れた化粧。


 こうやって見ると――どうにも、こう……気合が入り過ぎている気がするのだ。


 普段は化粧をしないわたしだが、それはあくまで、『どうせ万道具を製作していたら落ちるから』『むしろ物によっては化粧品との相性が悪いからつけていたくない』という理由からであって、毛嫌いしているわけではない。一日家にいるけど気分を上げるためにメイクをする! というほど好きなわけではないが、出かけるときくらいは普通に化粧をする。


 でも、それは、いつもわたしのためだけにしたもので。

 こうして、誰かのためにおしゃれをする、ということに慣れていないので、なんだかやりすぎな気がしてしかたがないのだ。……服を選んだのは姫鶴だけど。

 元の体が『ヒロイン』という一級品だからか、ちょっと手を加えるだけでかなりの美少女ができあがるのに、結構頑張ってやった結果、すごいことになっているのである。中身はともかく、外側は元がよすぎるのだ。


 その結果、こんな感じでいいのだろうか、とわたしは柄にもなく、緊張しているのである。あと三十分もしないで、透くんとの待ち合わせなのに。

 学園に行くのなら通り道だから、と迎えに来てくれることにはなっているから、ギリギリまで家に居られるけど、着替えるならさっさと着替えないと、いくら何でも時間が足りない。


 これでいいの!? 大丈夫? 変じゃない? 

 脳内の姫鶴に問うてみるが、彼女は親指を立てたまま、何も言ってくれない。そりゃあ、この服を選んで、絶対に着てこいって言ったのは他でもない姫鶴自身なのだから、彼女は肯定してくるに決まっている。


「――……大丈夫、だよね。うん、大丈夫、大丈夫……多分」


 わたしはぐるぐると落ち着きなく、鏡の前を歩いては、姿見に自分を映してみて、おかしくないか確認する。

 そんなことを繰り返していると、あっという間に三十分経ってしまったようで、呼び鈴が鳴った。――十中八九、透くんである。もう逃げる時間はない。


「ええい、知らん!」


 わたしは全ての責任を、姫鶴に押し付けることに決めた。何か言われたら、でも姫鶴がこれにしろって言ったんだもん! って責任転嫁してやるのだ。


「――よし」


 わたしは深呼吸を一つして、玄関へと向かう。結局、姫鶴に勧められた服を着替えないままに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ