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「透くんはじいちゃ――祖父が引き取ってきた子なんです。どこから連れてきたのかは知らないんですけど」


 どこの子、と祖父は言わなかったし、教えてくれなかった。ただ、わたしとは顔が似ても似つかないし、父も母も一人っ子だと聞いていたから、少なくとも、いとこではないはず。仮に親族だったとしても、いとこよりもっと遠い親戚だと思う。

 小さい頃は一緒に住んでいた。確か、わたしが薄暮の森へひっそり遊びに行って、大怪我をした頃にやってきたのだと思う。明確な時期を思い出すことはできないけど、多分そのくらい……だと思う。自信はない。


 一緒に祖父の弟子として、万道具を作った日々が懐かしい。それなりの年頃になるまでは一緒の家で生活していた。今はあの家に引っ越してしまったけど。

 透くんはわたしほど万道具にハマらなかったみたいで、今はあんまり作っているところを見たことがない。まあ、わたしが異常なまでに万道具に執着している、というのもあるかもしればいが。わたしと比べたら、大抵の人は興味がない、ってなってしまうと思う。普通の人にとって、万道具は作るものじゃなくて使うものなのだから。


「幼馴染カップリング――いいわね、推せるわ」


「そんな関係だから、透くんも妹みたいにわたしのことを思っているんじゃないですか?」


 姫鶴の言葉にわたしは言ってみるが「そんなことないって!」と反論された。彼女の中では、もう、透くんがわたしを好きなことが決定事項らしい。


「ほら、恋愛を意識しなかった男女が意識し始めると、とんとん拍子に進むって言うじゃない? 意識し始めたらきっと一瞬よ! ――ということで、はい、これ」


 姫鶴は小さな鞄から封筒を取り出し、わたしに差し出してきた。黎明学園の校章が入っている封筒だ。

 わたしはそれを素直に受け取った。


「なんですか、これ」


「文化祭の招待状! 二枚あるから、透さんと一緒にどうぞ」


 中身を確認すると、確かに二枚のチケットがあった。招待制なのか……。まあ、結構規模のでかい学園だからなあ、自由参加にしてしまうと、人の管理が難しくなるのかもしれない。


「でも、文化祭なんて――」


「黎明学園は万道具の製作を学ぶ学園よ。普通の文化祭だけじゃなくて、研究の発表や展示なんかもあるんだから」


「行きます」


 即答した。

 えっ、楽しみ! 一人で作るのが難しい万道具の展示とかもあるかな!? もしかしたら、ゲーム内に登場しない万道具もあるかも!


 わくわくと、まだ見ぬ万道具に思いをはせているわたしは気が付かなかった。


「――それにしても、透、なんてキャラ、ゲームにはいなかったのに。……まあ、もはや黎アルとは言えない世界になっているから、そんなもんなのかな。私の結末には関りなさそうだし……なんとかなるかな」


 という、姫鶴の小さな呟きには。

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