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 姫鶴に引きずられるようにしてやってきたのは、普段自分では絶対に入らないような、きらきらとしたお店。姫鶴のような、派手でおしゃれな女の子が客層、という雰囲気の店に、入って早々居づらくなる。


「――で? あのイケメンはどんなのがタイプなの? 貴女は大体の服、似合うと思うけど」


「タイプって言われても……知らないですよ。あと、彼は透って名前があるので、イケメンで呼び方を固定しないであげてください」


 わたしがそう言うと「透さんね」と、聞いているんだか聞いていないんだか分からないような声音が返ってきた。姫鶴の視線は服に向いている。


「まあ、あの様子だと貴女だったら何着ても喜ぶんでしょうけど」


「――ええ?」


 流石にその言葉には同意しかねる。


「透くんはわたしにそういう興味なんてないでしょう。そりゃあ、作業着や店の制服以外の服の違いくらいは気づくでしょうけど」


 わたしがそう言うと、「は?」と言いながら姫鶴は振り返った。――……その顔は、驚愕一色だった。


「あな、貴女ね! 鈍感にも程があるでしょ!」


 思わず出てしまった、という様子の大声は、思いのほか店内に響いた。そこまで広くない店だからか、一瞬、シン、と静まり返るが、またすぐに人の話し声が戻ってくる。

 姫鶴も大声を出した自覚があるのか、少し気まずそうな顔をしたものの、すぐに声をひそめて「鈍感も極めたら透さんが可哀想よ!」と言ってきた。


「鈍感って――それは姫鶴の方でしょう?」


 わたしはクマクの種を採集するときのことを思い出していた。明らかに人数が増えてほしくなさそうな赤希と詩黄に気が付いていなかったじゃん。

 そう思って、採集のときの話をしながら反論したのだが。


「わざとに決まってるでしょ」


 一刀両断だった。


「何故か周りは諦めてくれないけど、私は青慈以外とくっつくつもり、ないもの。下手に希望を持たせたら可哀想だし、青慈に勘違いされたくないもの」


 そ、そんな考えがあったなんて……全然気が付かなかった。

 露骨に驚いた顔をしてしまっていたのか、「鈍感」とまた言われた。……今度こそ何も言い返せない。

 わたしより、一歩も二歩も先に言っているような姫鶴見たら、透くんはわたしに好意を抱いているように見えるという。にわかに信ぴょう性が出てきた。


 ……でも、わたしのこと、好きになる要素ってどこにあるんだろう?


 わたしの店の唯一の店員である彼には、随分と情けない姿を見せてきた。主に、女としてずぼら過ぎるところを。

 男の人は、もっとこう、幻想を抱いているものなんじゃないだろうか。少なくとも、女に対しての理想みたいなものはあると思う。その理想に、わたしの姿はどうにも当てはまっていないような気がするのだ。

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