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――服。……服?
あれっ、今日って話をしようって感じじゃなかったっけ? わたしはてっきり、甘味処とかで新作のスイーツを食べながら、だらだらと話をするものだとばかり思っていたんだけど。
「だって貴女、いくらなんでも適当すぎるんだもの」
納得いっていない表情をしてしまっていたのか、少し説教するような声音で、姫鶴がわたしの服を指さしながら言った。
この世界、東洋ファンタジー、と言えばいいのか、和服ベースの服が多い。完全に着物や袴、ってわけでもないんだけど。黎明学園の制服も、和テイストなセーラー服、学ラン、って感じだし。
だからこそ、おしゃれな服やフォーマルな服になるほど、着るのが面倒なのだ。それはもう、Tシャツとかが恋しくなるくらいに。
今日は一応、持っている服の中でもまともな、ワンピースっぽいものを着てきたんだけど……。
「私、確かに青慈ガチ恋勢だったけど、だからといってヒロイ――んん、『万結』が嫌いだったわけじゃないのよ」
ヒロイン、という言葉を咳払いでかき消す姫鶴。周りには結構人がいるから、気にしているようだ。
そんな中でも――姫鶴はハッキリと言い捨てた。
「正直、手を抜いてる『万結』は解釈違いなの」
……これは、面倒くさいから、作業着と部屋着の作務衣がほぼ兼用ということは言えないな。口が裂けても。
「まあ、私が私だし、貴女に『万結』を強要するつもりはないけれど、限度があるわよ」
「……ぐう」
強く反論できない。確かに、今日着てきた服は、わたしの持っている服の中ではちゃんとしたものだし、別におかしくはないけど……ここまでかっちりきめてきた万結の隣に立つのを考えると……ちょっと……いや、それなりに、だいぶ、劣る。
「貴女の人生なんだから好きにしたらいいけれど、それでもあんなイケメンが傍にいるんだから、さっさとくっついちゃいなさいよ。どうせ万道具に夢中になって婚期を逃すのが目に見えてるんだから」
「……イケメン?」
万道具に夢中になって婚期を逃す、という言葉には同意しかないけど……イケメン、とは。
「貴女のところの従業員」
「うちの従業員って……透くん? いや、彼とはそういう関係じゃ……」
恋愛の『れ』の字もないというのに、そんなこと急に言われても。
しかし、姫鶴はわたしの言葉を聞いていないのか、それとも聞いた上で無視しているのか、わたしの手を取って引っ張った。
「いいから行くわよ! この姫鶴様があのイケメンにふさわしいくらいの美少女に貴女を仕上げてあげるから!」
……ちょっと待ってよぉ……。




