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 透くんの部屋にたどり着くと、彼の部屋をじろじろと見る余裕もなく、じゃばばばば、と水が勢いよく出る音に意識を持っていかれる。


「壊れてるねえ……」


 明らかに異常な音に、わたしは思わず呟いた。まあ、透くんの持っている物から推測して、どう壊れているかはなんとなく分かるけど。


「上がっても大丈夫?」


「すみません、大丈夫です。散らかってますけど……」


 散らかっている、と言いながら部屋に案内されるときほど、さほど散らかっていないように思えるのはわたしだけだろうか。本当に散らかっている人間は、それが最善だと信じて疑っていないから、物が散乱しているなど思いようがないのである。ブス専が他人から指摘されないと気が付かないのと一緒だ。

 そんなわけで、透くんの部屋も、例にもれず全然汚くなんかない。慌てて出てきたのか、ところどころ床が濡れているけれど。


「じゃ、おじゃましまーす」


 そう言ってわたしは部屋に入り込み、音のする方へ向かう。

 明らかにお風呂の扉であろうすりガラスのドアをあけると、それはもう、凄い勢いで水道から水が流れ出ていた。出ている水から湯気が出ている様子はない。温度は高くないだろう。

 わたしはぴゅっと軽く流れている水に指を突っ込んだ。うん、冷たい。


「水が止まらないのは、まあ、コックが壊れているからだろうね」


 わたしは言いながら、レンチに似た道具できゅっと水栓を閉める。

 水が出たままの状態で、コックがバキッと折れたのが原因だろう、という推測は正しくて、水はすぐに止まる。簡単なことだけど、専用の道具がないと、応急処置をすることすらままならない。


「あとは……」


 わたしは浴槽にとりつけられた湯浴炉本体にぺっと軽く触る。透くんが慌てたようにわたしの手を取り、湯浴炉から引きはがした。


「な――なにやってるんですか!」


 わたしが触ったのは、正常に動いていればそこそこの熱さになる部分。湯を沸かし始めたときは熱くないし、湯を沸かし終わればすぐに冷えていくから、普通に使う分には気をつけなくても触って火傷をするようなことはない。風呂を沸かしながら入る、という、本来やっちゃだめな使い方をするせっかちがどうかは知らないが。


 ちなみにちゃんと熱かったので、お湯は沸くはず。ちゃんと安全装置が働いて、お湯が出っぱなしにならないようになっているんだろう。

 本来なら、表面温度を計る機器で検査するのだが、わたしは面倒くさくてよく素手で触って確認するのだ。熱ければ問題ないわけだし。


「このくらいじゃ火傷しないからだいじょう――ご、ごめんなさい」


 すっかり手の皮が厚く固くなった今では、百度もしない湯浴炉にダメージをくらったりしないのだが、あまりにも透くんが真剣な表情をしているものだから、わたしは思わず謝ってしまった。

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