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「――あれっ!?」
気が付けば、客間で寝ていた。外から差し込む日光はなく、すっかり夜になっている。いつ寝落ちしてしまったのだろうか。倒れた記憶もない。
変な夢を見ていたような気がするが、まったく思い出せない。本当に、寝る前が曖昧だ。
とりあえず、寝ぼけた頭で、枕替わりにしていた座布団を直し、毛布代わりにかかっていたエプロンをつかみ――思い出す。
お店!
慌てて起き上がり、店に向かうと、閉店作業をしている透くんがいた。
彼はわたしを見ると、「起きましたか」と少し呆れたような表情を見せた。多分……怒ってない。多分。いや、叱らないでほしい、というわたしの願望が入っているからそう見えるだけかも。
「店のほうは大丈夫です。僕じゃ修理はできないので、お客さんの名前と万道具の状態だけうかがって、全部まとめてあります。後日受け取りに来るよう、頼みました」
透くんが指さす先には、いくつかの万道具とメモ紙が置かれたカウンターがあった。
すっかり整理された注文依頼書と修理依頼書の隣に。
わたしの整理の仕方と、透くんの整理の仕方は少し違う。別に透くんの整理の仕方だと見にくい、ということはないけど。
ぱっと見た感じ、わたしの書類の整理の仕方だった。透くんは依頼を受けた順に並べ、わたしは効率よく作業できる順番にまとめる。この伝票の山は後者。少なくとも、伝票の整理が終わってから寝たようだ。
依頼書の伝票を見た後、ざっと追加の修理依頼を確認するが、すぐ終わりそうなものが多い。
「これなら明日までには……」
「寝てくださいね」
わたしの独り言に、間髪入れずに、言葉を被せるように透くんの強い語調の言葉が飛んできた。
明日にはもう、取りに来てもらっても大丈夫なようにしよう、と思っていたのに、透くんに釘を刺されてしまった。有無を言わせない笑みだ。逆らえねえ。店長、わたしなのに。
「ていうかわたし、いつ寝たんだろう……」
雑に確認していた書類を片しながら思わず呟くと、今度こそ透くんの怒った声が聞こえてきた。
「記憶がないなら、なおさらしっかり休んでください! お客さんの出入りが落ち着いたころ、寝るからって店長が言ったんじゃないですか」
そうだっけ。全然覚えてない。まあ、ぶっ倒れるようなことにならなくてよかった。お客さんに迷惑をかけていないなら、ギリギリセーフ、のはず。
――……確かに、起きたばかりだけれど寝たりない。明日の営業もあるし、今日はおとなしく寝ておこう。ああ、でもやりやすいようにメモに目を通すことくらいはしておこうかな。




