表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/129

44

 ふ、と意識が浮上した、気がする。


 あれ、わたし寝てた? いつの間に? ……違う、伝票の整理をしてなかったっけ? あれ終わった? お店、閉めたんだっけ? まだ営業時間? 

 どうにも思考がまとまらない。頭がぼんやりしていて、さっきまで何をしていたのかすら思い出せない。伝票整理と寝落ちしたであろう間の記憶がない。


 動かなきゃ、まだ店がある。そう思っても、体が動かなかった。金縛り、というやつだろうか。

 でも、頭は起きているのに、体は眠っている、という感覚というよりは、意識がハッキリしている、体が動かない夢を見ているような気分だ。限りなく現実に近い気がするのに、どこかでこれが夢だと分かっている、不思議な感覚。


 たまに、こういう夢を見るときがある。決まって、起きたと思っても実際は目を冷ましていなくて、ただ『起きた』という夢を見ていただけ、みたいな。

 この世界に生まれ直ってからは、あまり見ていない。この転生自体が夢みたいなものだからかもしれないけど。


 それでも、この夢で、今、わたしが眠っているのは、『万結』としてのわたしが普段使う寝台の上。間違いなく、この世界が、今のわたしの現実なのだ。


 いや、今は夢の中なんだけど。


 なんとか起きれないだろうか、と体を動かそうと奮闘していると、さら、とわたしの頭が撫でられる感触がした。風じゃない。何度も、温かい手のひらがわたしの頭を撫でる感覚がある。


 ――誰?


 わたしの頭を撫でるのは――じいちゃん? もう、頭を撫でられるような子供じゃないよ、と言い返そうと思っても、指一本動かせないのだから、口も動くわけがない。


「――――」


 名前を呼ばれた気がする。じいちゃんじゃない、もっと若い男の人の声。じゃあ、父さん?


「――が守りた――、本人が――じゃどうしようも――」


 父さん、とも違うような気がする。だって、父さんはもっと撫でるとき、豪快なのだ。乱暴、と言っても過言ではない。いつも髪がぐしゃぐしゃになっていたような記憶がある。幼い頃の話だから、確実なことは言えないけど、少なくとも、こんな風に、一定方向にそっと触れない。


 ――いや、そもそも、じいちゃんも、父さんも、もう、この世にはいない。じいちゃんは一年前、父さんはもっと昔に、死んでしまった。

 じゃあ、誰だろう。


 前にも、こんなことあったような……。

 そうだ、確か、あれは薄暮の森へ探検に出かけたとき、原っぱで寝てて……。

 そのとき、わたしと一緒にいたのは。


 ――透おにいちゃん?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ