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目が回る、というのはこういうことだろうか。慣用句的な意味合いではなく、実際に目が回っているような気すらする。
なんでこんなに忙しいんだ、と思いながら、わたしは特注品の注文受付や修理依頼の受付と、店に並んだ商品のレジ打ちをこなしていた。
ぼけーっとしながら透くんが暇そうに棚を掃除していたのを眺めていた昨日とは打って変わって、今日はめちゃくちゃ人の出入りが激しい。誰だ、店の混雑具合はある程度前もって予測できるとか言った奴。わたしだけど。
この忙しいのに、透くんは商品の配達に行ってしまって不在である。いや、商品配達は有料サービス、お金をもらっているからそのこと事態に不満はないんだけど。どうせ今日も暇だろ、と思って適当に行かせてしまったのが間違いだった。
こんなに忙しくなると分かっていたら、このタイミングでは行かせなかったのに!
「万結ちゃん、この商品、在庫ある?」
「ちょ、ちょっと待ってくださいね!」
万道具の注文受付とレジ打ちだけでなく、品だしと在庫確認も追加された。そこになければないですね、と言いたいところだが、客が聞いてきた商品は在庫が工房の奥にある。取りに行かなきゃ。
透くんがいれば取りに行ってもらったけれど、いないものは仕方がない。配達を頼んだ距離的に、まだまだ帰ってはこないだろう。
こんな日に限って、昨日は徹夜をしていた。いや、完全に一日寝なかったわけじゃないけど、朝、陽が登り始めてから寝たから、仮眠程度の時間しか寝てなかったのだ。
クマクの種油の製作を、キリがいいとこまで、キリがいいとこまで、とやっていたら朝になっていたのだ。よくやらかすことだ、本当に馬鹿。
普段ならサクサク終わらせることができるだろうに、今日はそうもいかない。徹夜明けの頭はいつも通りの働きを見せず、修理に遅れが出る。
頭はくらくらするし目はかすむ。ただ、妙にテンションは高かった。もはやどうとでもなれ、と言う気分である。絶対体によくないし、こういったときは大抵間抜けな大きいミスをやらかすので、毎回ちゃんと寝よう、と思っていても、ふとしたときに徹夜になるのだ。
今回みたいに。
前世で、二十四時間ぶっ通しで経営パートの金稼ぎをしている時を思いだして、変に楽しくなってきた。反比例するように、体調はどんどん悪くなっていくのだが。
なんとか全員さばき切り、雑に置かれた特注品の注文依頼書と修理依頼書を分別していく。やばいな、こんなにあるのか。
一息ついたにも関わらず、忙しさは止まらないようだ。まあ、流石に今日はちゃんと寝るけど――と、紙を分別していった。
――わたしの記憶があるのは、この辺りまでである。




