42
話戻って。
とはいえ、この世界、未婚率はかなり低い。独身の割合がどんどん増えていった時代を生きた前世と違い、この世界は非常に未婚率が低い。
まあ、乙女ゲームだしね。
愛し合った人と結ばれることが一番の幸せて、いつかは誰かと結婚することが当たり前だと信じて疑わない世界。女の幸せは結婚、男の幸せは愛した女を養うこと。そのことに異を唱える人は、ほとんどいない。
前世の記憶があるわたしからしたら、恋愛脳過ぎるだろ、と思わないでもないのだが、本人たちがそれで幸せそうなのだから、関係のないわたしが口を挟むことはできない。周りが恋愛脳なことによって実害を受けたこともないので、どうでもいいともいう。
未婚の人間だって、早くにパートナーを失った人がほとんど。恋愛が苦手で、結婚に嫌悪を抱いていて、自由に生きるために独身を選ぶ、という人間はいない、と断言できてしまうのでは、と思うほどに少数派だ。そういう世界なのである。
わたしを育てた祖父も、一応未婚の状態ではあったけれど、それは祖母を早いうちに亡くしたから。後妻を取らなかったと言うだけ。
それでも、時折、祖父に妻がいないことを揶揄する人はいた。後で死別していて、孫までいる、ということを知ると手のひらを返すんだけど。
……これは需要がないとか言っていないで、わたしも相手を探すべき?
わたしの店に来てくれる人は、祖父時代からの常連か、わたしの万道具を作る腕を信頼して来てくれる人ばかり。それでも、新規顧客は欲しいし、そういうとき、未婚の女だとあれこれ言われてしまうだろうか。
結婚するのが当たり前すぎて、万道具にかまけていたら婚期を逃していました、なんて通用しないのだ。
「てっ、店長に需要がないなんてこと、ないです! 万道具を作る技術は人より高いですし、か、かわ……っ、手荒れ程度で魅力がなくなると思いません」
「……そう?」
いつも一緒にいる透くんに言われると、少し自信が沸いてくる。なんていったって、乙女ゲームのヒロインフェイスだからね。劣化だってそうそうしないだろうし……。
うん、決めた。
「わたしも相手探そうかな。適齢期まであと数年あるし、行き遅れる前に見つかるよね、きっと」
「……っ、……っ、そ、そうですね……っ!」
何か言いたげに口をパクパクさせながらも、透くんは言葉を絞り出していた。
君がわたしに需要がないことはないっていったんだぞ。その気にさせておいて、無理だなんて言わないでよね、まったく。




