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ヒダノ草、ハネトビ草、ジゲナの木の葉っぱ。確かに葉っぱばかりだし、これならすぐに採集も終わっただろうな、と、わたしは鶴姫のサイドポーチを見て思った。
「このラインナップだと……人灯りでも作るんですか?」
「そうよ。流石、よく分かるわね」
人灯りとは、人が近付くと自動で灯りがつく行燈や提灯のこと。姫鶴曰く、完成したものは学園祭の飾りとして使われるらしい。
それにしても、思ったよりも種類がないな。
わたしがどうしたものか、とあごに手をやって考えていると「無理そう?」と姫鶴が心配そうに声を上げた。
「んー……このジゲナの木の葉っぱなんかは、乾燥したものを炙ると、人体にかかっている万道具の効果が消えます」
この辺は使えそうですね、とわたしは数枚の、枯れかけたジゲナの木の葉っぱを指さす。
「じゃあそれを使って――……炙る?」
万道具の効果がなくなる、と一瞬顔を明るくしたが、不穏なわたしの言葉に、すぐに顔を曇らせた。
そして、その予想は間違っていない。
「ジゲナの木の葉っぱにラリって、それ以外の効果を受け付けなくなる、とも言いますね」
「違法薬物!」
姫鶴の端的なツッコミが飛んできた。事実、ゲームの中の素材図鑑の説明には、乾燥させて炙ったものを使うのは違法で捕まる、って書いてあった。そんなものをゲームに搭載するな、と言いたかったが、その使い方をしない限りは素材として有能だし、なにより炙っても依存性はないらしい。本当かよ、と疑いたくなるが。
「まあ、生のままだとそういった効果は一切ないですし、ナシナの花と一緒にしておけば乾燥させても薬物的な効果はなくなりますし。……ナシナの花、ないですけど、一緒に採って来るように言われませんでした?」
「……忘れてたわ」
「駄目じゃないですか」
わたしの言葉に、姫鶴は目をそらした。
「まあ、ジゲナの木の葉は選択肢から除外するとして……。ヒダノ草とハネトビ草か……」
万道具の素材になるものは、そのままでの不思議な効果を発するものと、そうでないものに分けられる。ヒダノ草は前者で、ハネトビ草は後者だ。
ヒダノ草は摩擦による刺激で発火する変わった草だが、細長いその葉っぱを握って手を滑らせる勇気はない。十中八九手が切れて出血する。
ハネトビ草に関しては、単体では効果を発揮しない。素材同士を結ぶものを使う素材の一つだ。
ちなみにわたしの持つクマクの種は、種油は素材になるけれど、種そのものが何の素材になるわけではない。
……これ、詰みでは?




