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ああでもそうか、だから彼女はそれっぽい台詞をわたしが言ったら、すぐに肝試しイベントと結び付けたのか。
学園に泊まり込んだときの肝試しだと言っていたから、てっきり学園の敷地内でやったのだと勝手に思い込んでいた。
場所が場所なので、彼女を不安にさせるのは十分だったのだろう。
「で、場所は? 玄天川ですか?」
「……玄天川から澄清池のあたり」
澄清池か。ゲームの中だと、採集区画を選ぶマップの配置的に玄天川の下に当たる。現実で考えれば、玄天川の終点にある滝が落ちる池が澄清池だ。滝、と言っても、そんなに大きくなくて、高さもない。
クマクの生え方によっては、夜なら人影に見えないこともないし、本来ならば今みたいに迷って帰れなくなるような場所でもないので、肝試しに選ばれるのは、ある意味で納得だ。危険では、という考えは変わらないけど。
「……もしかして、玄天川から澄清池まで落ちるんですか、本来の姫鶴は」
「そうよ」
大怪我をしてしばらく話に出てこない、と言っていたのは覚えていたので、まさかと思って聞いてみれば、肯定が帰ってきた。
落ち方次第では死ぬこともあり得るぞ……。
姫鶴の説明によれば。
迷子になった万結を助けに、一緒に肝試しをしていた攻略キャラがやってきてくれる。そこで、ひと悶着あって、姫鶴は持っていた提灯を壊してしまうのだ。
光源をなくした姫鶴は暗い森の中で道に迷い、そのまま足を踏み外して――ということらしい。
滝ができる崖とはいえ、高さはない。代わりに、池の深さもそこまでではない。上手く傾斜を転がって落ちることができればいいが、失敗したら――。
「それは死にますよ」
「だから貴女に縁提灯を頼んだんじゃない」
縁提灯に限らず、魚提灯はかなり丈夫だ。メイン部分が水で、さらにはその中に発光する魚が泳いでいるのだから、当然と言えば当然。
普通の提灯だったら駄目になるような衝撃でも、魚提灯だったら平気で耐える。
「……総合的に考えて。もしかして、今、わたしたち、紛い香を使われているってことですか?」
紛い香で迷子になるイベントに似たことが起きているのなら、そう考えるのが自然――ではあるのだが。
「じゃあ、誰が使っているっていうのよ」
わたしも思いついた疑問を、姫鶴は口にした。
ゲーム本編では、姫鶴が万結に悪意を持って紛い香を使っている。でも、今は?
紛い香を使うはずの姫鶴は、中身が別人なので使うわけもない。本人の様子からして、わざわざ使う理由がない。
当然、わたしが使うこともない。
わたしたちの疑問に、答えられる人物はこの場にはいなかった。




