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 ……ここって、こんな道だったっけ?


 一通り姫鶴と話を済ませ、皆と合流しようとなってから数十分。わたしと姫鶴はいまだに湖黒たちと合流できないでいた。

 玄天川へと来るのは久々で、祖父が生前元気なときに来たきりだから、数年ぶり。自然な場所だし、景色が変わることくらいはあるけれど、それにしたって、さっきもここを通った気がする。


 ――というか、そもそも、いつ湖黒たちとはぐれたんだろう。


 クマクの種採集に夢中になっていたことは確かだが、最初のうちはまだ視界の端に何人か映っていた覚えがあるし、そんなに離れた場所に行ったわけじゃないはず。

 それなのに、今はわたしたち二人以外に、他の人物を見つけられないでいた。

 ついさっきまで、『黎明のアルケミスト』の話をしていたけれど――あの時点で、すでに周囲に人はいなかった。話をする丁度いいタイミングだと思っていたけれど、もう既にあそこで道に迷っていたというのか。


「……ねえ、私たち、もしかして、迷子?」


 姫鶴も同じことを考えていたのか、ついにその言葉を口にしてしまった。


「えっ、玄天川って、そんなに複雑な場所じゃないわよね。見通しだって悪くないし……」


 クマクが至るところに生えているから、見通しはよくないと思うけど……でも、確かに死角が多いかというと、そんなことはないのが事実。多少見えにくいところに誰かがいることは考えられても、これだけ歩き回って誰にも遭遇しないというのは不自然な話だ。


「困りましたね。日付が変わる前には帰れるかな」


 ぽろっとなんの気なしにこぼした言葉に、姫鶴がびくっと、大げさなまでに肩を跳ねさせた。


「い、今なんて……」


「え? 日付が変わる前には帰れるかなって……」


「そ、その台詞! 文化祭前夜の泊まり込み肝試しイベントで万結が言う台詞じゃない!」


「一言一句、ゲームの台詞覚えているんですか、貴女」


 流石にそれは嘘だろう。

 そう思って言ったけれど、「完璧じゃないけど、ある程度覚えている自信があるくらいには周回したわ」と言われてしまった。本編をそれだけ何度もやり込むのなら、もう少し経営パートもやればいいのに、と思ったのは内緒。どの部分が楽しいかなんて人それぞれなのである。


「別に、今日中に帰れるか心配するのは変な話ではないでしょう」


「まだ夕方にもなってないのに?」


「…………」


 わたしは言われてから、その不自然さに気が付いた。空を見上げれば、快晴。青空が広がっていて――日没にはまだまだ時間がかかりそうなほど青い。

 朝一番に素材を買いに店へ行って、そのままここへ来たのだ。今心配するのはむしろ夜よりも昼食のことのはず。


 迷子になって、日が暮れるまでには帰れるか、と心配するのはおかしな話ではないけれど、昼も夕方もすっ飛ばすのは確かにちょっとおかしい。

 薄暮の森で行方不明者が時折でるのは事実だが、今のところ玄天川で誰かが遭難した、という話は聞いていない。それほどまでに、ここは森の手前側で、監視員のいる場所からも、整備された歩道からも近い場所なのだ。


 なのに、なんで、急に夜の心配をしだしたのか。

 遭難して夜の心配をするのは自然な流れだが、そんなことを考えるにはあまりにも不自然な時間と場所。


「……ゲームの強制力って、働くときは働くものなんですか?」


 わたしの質問に、姫鶴が頭を抱えたのは言うまでもない。

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