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なるほど、確かにそれだけ聞くと、赤希が死ぬことがなければ彼の心が病むことはなくなる説あるな……。
何故赤希が暗殺されなければいけないのか、という疑問や、暗殺しなければいけないのなら、その場で生き返ったら駄目じゃん、という懸念など、思うところはいろいろあるものの、『死者が生き返る薬』というものがアイテムとしてあれば、ある程度選択肢は増えると思う。
秘薬シリーズという、その存在すら曖昧なものに縋りたくなるほど、プレイヤーは救いを求めていたということか。
「ゲーム開始時――入学のときまでにはもう赤希はだいぶ本編からずれている人物になっていたから暗殺云々がどうなっているのかは分からないけど……それでも、紫司馬と赤希は親友と呼べるまでの間柄になっていたし、紫司馬自体も、ゲームで見た彼と全然変わりがないの」
だからわたしはゲーム終了の卒業まで気が抜けないのよ、と姫鶴は言った。
ゲームと変わらない、むしろ、原作の強制力のようなものを感じられる存在がいたからこそ、彼女はわたしに縁提灯の製作依頼をして、破滅ルートに行かないよう、おびえているのだろう。
しかし、これで紫司馬がどういう人物なのかは分かった。
今のところは一般人を装って生活しているとはいえ、暗殺業とかいうやべー職業についているのならば、店にまた来てくれと言ったのは早計だっただろうか。
いや、流石にわたしが殺されることはない……よね? 一応、ゲーム原作だとヒロインだし。
「……ちなみに、ヒロインが死ぬエンディングとかあるんですか?」
今更ながら不安になってきた。
てっきりほのぼの系な世界観のゲームだと思っていたから、平和な世界だと思っていたのだ。そりゃあ、今はここが現実で、そっくりそのままゲームと同じように進み、舞台とならない場所は全て存在しない、というわけではないけれど、少なくとも、暗殺とかそういう薄暗いものとは無縁だとばかり。
「なくはないわ。でも、正直、ゲームのキャラと関わりがほぼないのに、そういったイベントに巻き込まれるとは思えないわよ」
確かに。
学園に通い、頻繁にゲームキャラクターだった人物と顔を合わせる姫鶴とわたしは違う。
本来ならば学園に入学するべき年に店を継いで一年。一年もの間、攻略キャラたちとは顔を合わせることはなかったのだ。
それならばわたしの周りに強制力のようなものはないと思う。もし、ゲーム通りに進む強制力があるのであれば、もっと早くに、それも個別に攻略キャラたちと出会っていただろう。
なんて、楽観視していたのだが。
この数十分後、わたしの考えは覆されることとなる。




