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03

「店長? どうしました?」


「なんでもないよっ!?」


 ホームページの紹介とはかけ離れたキャラクターたちを見ながら生前に思いをはせていると、うちの唯一の従業員であるとおるくんに声をかけられ、びくりと肩をはねさせてしまった。意識が完全に向こうへいっていたので、自分でも笑いたくなるほどのビビりようだった。

 「ふへへ」と笑ってごまかすと、透くんは不思議そうに首を傾げた。


 もう一度、視線を彼らに戻すと、ばちり、と目が合う。姫鶴と。

 彼女はさっと表情を変え、「あ、あ、あ~~~~!」と大声を上げるとばたばたとこちらへやってきた。。


「あ、貴女、貴女ね! あの、どうして、あの、あ、あ~~~~!」


 驚愕の表情に染まった姫鶴は、バン、とカウンターをたたき、わたしに指さしながら叫んでくる。本人の中で言いたいことがうまくまとまっていないのか、鳴き声みたいで言葉は不明瞭である。


「お客様、いかがなさいました?」


 正直、うるさいなと思いながらわたしは作り笑顔を浮かべた。単純に声量がでかい。


「いかがじゃなくて、あの、その、何、なんで入学してこないの!?」


 はて。入学とな。

 それはやっぱり学園のことだろうか――と思い、ふとおかしいことに気が付く。

 この人、なんでわたしが……ヒロインが本来、学園へ入学することを知っているんだろうか。

 この辺りには作中の舞台となる『黎明学園』以外にも、いくつかの学校があるが、どれも比較的富裕層が通う学校となっている。


 家の手伝いや出稼ぎができないほど小さい子供が通い、簡単な読み書きを教えるような、現代日本の幼稚園、保育園に当たる学校以外は通う義務がないのだ。

 だからこそ、わたしが学校に通わず店を開いていても、この世界からしたら珍しいことではないのだが……。


「なんで、とは?」


「だって、ほら、あの、えっと、ヒロインが、あっ、ちが、えっと、えっと!」


 彼女の頭の中では考えがぐるぐると巡るがアウトプットはうまくいかないようで、もごもごと口を動かすだけだ。

 いや、ていうか今ヒロインって言った?


「……れ、黎明の?」


「あ、アルケミスト!!!!」


 ぽそり、と試しに問うてみると、クソデカボイスが返ってきた。

 なるほど、同じ転生者だったか……。

 作品を知っている彼女なら、わたしが『ヒロイン』であることも分かるのだろう。それに付随する設定も。


 となると、本来のライバルヒロインと性格が違ってくるのも当然か。わたしもきっと、元のヒロインとは違う性格だろうし。元の性格、恋愛パートやってないからあんまり分からないけど。

 ん? いやでも、彼女の性格が変化していることの説明になっても、攻略キャラがキャラ崩壊していることの証拠にはならないよな……。


「嘘、貴女も、転生……や、待って待って待って!」


「大きな声出さないでも待ちますよ」


 いちいち大声で正直耳が痛い。

 今店内にいる客は彼女たちだけ。他のお客さんに迷惑がかかる、ということもないが、いかんせん、こぢんまりした店だ。大声を出されると耳がキンキンする。


「や、あの、えっと、えっと……」


 ちら、ちら、とこちらを見たり、青慈を見たり。攻略キャラには聞かれたくない話だろうか。


「透くん、ちょっと店番頼むね。奥でこのお客さんと話があるから」


 わたしは透くんに店番を頼むと、姫鶴さんを奥へと招き入れた。急な展開に透くんは驚いていたが……まあ、わたしだって、転生がどうのこうの、という、事情を知らない人が聞いたら病院を勧められるような話を、透くんに聞かれたくないので仕方がない。許してくれ。

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