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 確か、彼の救済エンドが見たいんだっけ? ということは、彼が本編では、どこかで死ぬ……ってわけじゃないんだろうな、この姫鶴の雰囲気を見るに。

 じゃあ、闇落ちでもするんだろうか?

 わたしはうっすらと笑みを浮かべている紫司馬を見ながら、そんなことを考える。


 いや、でも、うん。まあ、いっか。

 今すぐにでも何かされるというのなら、そもそも姫鶴たちが一緒に森へくるとは思わないし。免許証――彼らは学生証だけど、それを持って入るエリアに立ち入るということは、少なくとも事件が起きるとは考えにくい。事件を起こして発覚を遅らせることができる場所に、なにかやらかす人物を連れて一緒にいくことはないだろう。


 わたしが入学していないことにより、本編のイベントがゲーム通りに進んでいないのに、それでもなお、本編のゲームのイベントが起こるかも、と、用心してわたしに縁提灯の製作を依頼してくるくらいだ。

 鈍感ヒロイン属性な姫鶴とはいえ、破滅ルートや死亡ルートを避けるべく行動してきた彼女は、それなりに警戒心というものがあるはず。


 それに、わたし、黎明学園に入学していないから、彼との接点もそうそうあるまい。

 ということで、何かあっても巻き込まれないはず。


 うん、じゃあ、今、用心深く考える必要はないな。

 わたしは考えることを放棄して、「わたしは万結って言います。近くで万道具の店を構えています」と彼に自己紹介をした。


「学園からは少し離れているんですけど、『結び(むすび)』って店です」


「――……ああ、あそこ」


 わたしが店の名前を言うと、紫司馬は心辺りがあったらしく、いかにも知っている、と言わんばかりの声を上げた。

 ……わたしは見たことないけど。もしかして、祖父が生きていた頃のお客さんだったのかな? 祖父が死んでからまだそんなに何年も経ったわけじゃないし、あり得ない話ではない。


 ちなみに、わたしの名前が万結だから『結び』という店名なのではなく、店名が『結び』だからわたしの名前は万結である。祖父も何代目かの店主。わたしが生まれるずっと前から『結び』で、そこからわたしの名前をつけたと祖父は言っていた。


「昔、一度だけ行ったことがあるよ」


 少し狭いけど、質のいい万道具が揃っているよね、という紫司馬の言葉にわたしは嬉しくなった。そしてやっぱり、祖父の客だったらしい。


「よかったら、また今度きてくださいね」


 わたしがそう言うと、彼はにっこりと、笑顔を返してくれた。

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