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結局、七人という大所帯で採集に向かうことになってしまった。ゲームでは二人でしか採集に行けなかったし、こっちに転生してからも、多くて祖父と透くんの三人でしか行ったことがないから、これほど多いとなんだか不思議な気分である。遠足に来たみたいだ。
詩黄、赤希、湖黒の三人は少し前を歩いていて、言い合いをしているようだ。声をひそめているからか、詳しい内容までは分からないけれど、まあ、おおよそ、なんで来たんだと責める詩黄と赤希の兄弟に対して、しれっと二人の文句をかわしている湖黒、というところだろうか。
彼らの目的であろう姫鶴はわたしと一緒に歩いていて、その少し後ろに青慈と青年が歩いている、はず。わたしはちらっと後ろを確認した。うん、歩いている。
「――姫鶴」
わたしは小声で姫鶴に話しかける。湖黒たちの会話の内容が聞こえてこない、ということは、それと同じくらい離れているわたしたちの会話も、声をひそめれば聞こえないだろう。青慈と青年もまた、そのくらいの距離がある。
「あれ、誰?」
誰、とは、名前も知らぬ青年のこと。
青慈の横を歩く、ラベンダーグレーの髪に、少しやぼったい眼鏡の青年。パッとしない、と言うと酷い言い方に聞こえるかもしれないが、攻略対象キャラである人物と比べれば大抵は地味になるものだ。
一瞬、目を丸くして驚き、何かに納得したような表情の姫鶴から察するに、彼もまた、『黎明のアルケミスト』に登場していたキャラと同じ人物なのだろう。
「ああ、彼は――」
そう、姫鶴が名前を教えてくれようとしたとき。
「紫司馬、と言います。自己紹介がまだでしたね」
すぐ背後からそんな声が聞こえてきた。わたしは思わず驚いて足を止め、振り返った。もっと後ろを歩いているものだと思っていたのに、いつの間に。
青慈の方は結構後ろにいるから、この一瞬で距離を詰めてきたんだろうか。……いや、まさかね。
いかにも文系で運動が苦手です、という見た目をしている彼がそんなわけないよね。
そういう確認をこめて姫鶴の方を見ると、サッと目をそらされた。少し表情がこわばっている。
……もしかして、本当に距離をつめてきたの?
わたしと違って、ちゃんと本編をプレイしている姫鶴ならば、彼がどういう人物なのか分かっているだろう。……攻略キャラたちはゲームとはかけはなれた別人になっているようだけど。
それにしても、紫司馬、か。
名前だけは分かる。と言っても、それは最近、姫鶴の口から聞いたから、だけど。




