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 翌日。わたしは一人、買い物に来ていた。


 今日は店が定休日ではあるものの、縁提灯の素材が足りなくて買い出しに向かったのだ。簡単なものなら自分で森へ採りに行っても良かったのだが、そこそこ難易度の高い採集場所に行かないと採れない素材なので、一人では危ないから行けない。採集屋に頼まないと。

 休日まで万道具のことか、と自分でも思うけれど、苦でないのだから、まあいいか。万道具を仕事にできて本当に良かったと思う。天職よ天職。


 街の片隅にある、いつもお世話になっている採集屋にたどり着いたものの、店に誰もいない。珍しいな。

 でも、外にも商品が並んでいるから、店自体は空いているはず。八百屋の野菜のように並べられた素材たちをざらっと眺める。……目当ての物はない。


 店先に並んでいないとなると、在庫を確認してもらわないと。それでもなかったら取り寄せになるけど……。うーん、来週までに、って言われているし、早めに素材、欲しいんだけどな。

 街の中ではここが一番質がいいからこの店で買えたら一番良かったんだけど、他の店を探すことも見当しないと駄目かな、これは。


「すみませーん」


 わたしは店の奥の方へと声をかけた。流石に店を開きっぱなしで不在にしていることはないだろう。奥にいるはず、と思っていたのだが――。


「はぁい、ごめんねさいね! ちょっと奥で課題してたものだから」


 ――バタバタと奥から姿を表したのは、ここの制服に身を包んだ湖黒だった。


 まさかの人物にわたしは驚いて目を瞬かせる。ここの店員は確か夫婦で営んでいたはず。結構な頻度でここに足を運ぶけれど、彼を見たことはない。息子……にしては、あの夫婦の年齢とは合わない。十五とか、そのくらいでつくった子供ということになってしまう。


「ええと……お会計かしら?」


 向こうはわたしが『万結』であることに気が付いていないのか、普通に接客してきた。普段、店に出ているときは化粧も最低限だし、作っている万道具によってはなにもつけないことも珍しくない。

 でも、今日は休日だから結構がっつり化粧をしている。印象もだいぶ違うだろう。


「えっと……クマクの種油、ありますか?」


 クマクの種油は魚提灯を作るのに一番大切なものだ。あれがないとそもそも魚を入れるための水球が作れない。あれを塗ることによって、水を形にすることができるのだから。

 ――が。


「ごめんなさいね。クマクの種油は今丁度切らしてるのよ。入荷はだいぶ先になっちゃうわ」


 申し訳なさそうに言う湖黒に、わたしは頭を抱えたくなった。

 やべえ、どうしよう。

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