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 優しいお兄ちゃん、という感じだし、なんでもかんでも「はいはい」って言って許してくれそうな雰囲気がある人だから、さっきの知守さんみたいに、あんまり嫉妬するイメージが沸かない。いや、浮気されたら流石に「はいはい」で許すとは思わないけど。


 わたしが店長で透くんが店員で、その上、幼馴染でもあるから『透くん』と呼んではいるけれど、実際は二つほど彼の方が年上だからな……。万道具一辺倒で恋愛に興味がないわたしよりも、彼の方が先に恋人ができて結婚するのだろう。

 成人がニ十歳のこの国では、前世からしたら結婚も少し早めで、成人式と結婚式が同時期、というのも珍しくない。なんなら、十六~ニ十歳が通う黎明学園の卒業式も被って、三つも式が被って大忙し、という人もいるくらいだ。


 もうニ十歳の誕生日まで一年を切っている透くんが、すでに恋人がいる、と言われてもおかしくない。

 えっ、ニ十歳になったら結婚するとか言い出す? もしかしてわたしが知らないだけで結婚話が進んでたりする?


「――店長?」


 ぼけーっと透くんを見ていたからだろうか。彼が首を傾げた。


「……透くんは寿退職しないでね」


 この国では、男でも寿退職は珍しくない。嫁の実家の家業をするために退職する、というのはよく聞く話だ。

 でも、男手があるというのは結構便利なのである。そりゃあ、万道具で重さを軽減することは可能だけど。防犯面でもいてくれたら助かる、というのは事実なわけで。若い女一人で切り盛りする店なんて、穴場の強盗スポットだ。まあ、勿論、強盗対策の万道具の準備も完璧なんだけど。


「きゅ、急にどうしたんですか!?」


 透くんがすっとんきょうな声を上げるものだから、わたしは彼に知守さんの先ほどまでの話と、透くんが結婚適齢期が近い話をした。


「透くんはいい店員だから、辞められたら困るなーって思って」


「……っ! や、辞めませんって! 絶対、辞めないです。死ぬまで働きます!」


 軽い気持ちで言ったのだが、力強く、重い言葉が返ってきた。死ぬまでは別にいいかな……。店をそう簡単に畳むつもりはないけれど、一応定年っていう概念はあるからね?


「お、おう……」


 予想以上に引いた声が出た。でも、多分透くんは気が付いていない。


「だって僕――ええと、ここで働くの、楽しいですから!」


 まあ、でも、楽しく働けているというのなら、いいのかな? 給料だって、個人店だからいい企業よりは低めだけれど、生活に困るような金額を渡しているつもりはないし。


「働く気にあふれていて頼もしいなあ。じゃあ、ほどほどに頑張ってね」


 わたしがそう言うと、何故かちょっとがっかりしたような顔をされた。なんでだ、君が死ぬまで働きたいって言い出したんだぞ。

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