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 昼隠筆を使うのは、基本的に他人に知られたくないことを書くときに使う。代表的なのはラブレター。みなまで言わなくとも、知守さんもその可能性に行きついたのだろう。

 結構仲のいい夫婦だったから、浮気はないだろ、と思いつつ、最近二人でいるところをあまりみていないから、気軽に否定もできない。というか、怖くて口を挟めない。


「えーっと、これの記入、お願いしますね。一週間で修理は終わりますので、それ以降、都合がいい時、取りに来てください」


 わたしはカウンター下から修理の受付表を取り出した。知守さんも普段から書きなれているものなので、なんの説明もなくさらさらと書き込んでいく。

 わたしは受付表の紙の一部を切り取り、引き換えの券としてそれを知守さんに渡した。

 彼はそれを受け取ると、「じゃあ、一週間後にまた来るわ」と出て行った。奥さんのところへ向かったんだろう。問いただすために。


「早まらないでちゃんと話を聞いてあげてくださいね」


 わたしは去り行く背中に声をかけたが、彼に届いたかはちょっと怪しい。……大丈夫だよね?


 この国では、一度結ばれた二人はだいたい、いつまでの仲睦まじいし、どちらかが浮気したらそれはもう、烈火のごとく怒る。愛情深く仲がよい、というのは聞こえがいいかもしれないが、嫉妬しやすく独占欲が強い、というのがほぼほぼイコールなので、最悪、痴情のもつれが殺人事件に……とかもそれなりに聞く。


 国民性、と言えるのかもしれないが、乙女ゲームの世界だからそうなのかも、と思うときもたまにある。恋愛パートをやったことがないから分からないけれど、ヤンデレっぽい描写とかあったのかな、となんとなく察したこともあった。人を思い通りに操る万道具にバリエーションがあるし、防犯系の万道具である拘束抜けの道具だったり鍵開けの万道具がキャラによっては必要だったりするみたいだったから……。


 いや、何も攻略対象が監禁してそこから逃げ出すために、と限ったわけじゃないけど。ライバルヒロインがいるようなゲームだし、ライバルヒロインである、キャラとしての姫鶴がヒロインとしての万結を、攻略キャラと会わせないために監禁したのかも……それはそれで結構過激だな。


 いずれにせよ、そういう性格が当たり前の国に生きているキャラたちなら、原作ではそういう気質であってもおかしくはない。完全に性格が変わってしまっている『今の』攻略キャラたちがそうであるとは限らないけど。……いや、詩黄に関してはあるかもしれない。

 修理受付の処理をしながらそんなことを考えていると、カララ、と入口の引き戸が開かれた。


「ただいま戻りました」


 透くんだった。

 ……透くんも、恋愛とかしたら、嫉妬深い男になるのかな。

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