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わたしの肯定の言葉を聞いた彼女は、「なら知ってるかしら」と一つの話をしてきた。
「あの都市伝説の真偽。ほら、免許皆伝の人だけが作れる、図鑑に載らない秘薬。あれがあると紫司馬の救済ルートが見れる、って噂あるじゃない」
「紫司馬がどなたかは存じませんが……秘薬は本当にありましたよ」
免許皆伝になると、一か所だけ新たに開放されるエリアがあるのだ。そこは非常に分かりづらくて、マップにも載らない秘密の場所。採集もなかなか大変で、何も収穫できないで採集のターンが終わる、というのも珍しくはない。というか、そこのマップではそれが当たり前、みたいなところまである。
そこでのみ採取できる素材で、薬を作れるのだ。
どんな生物でも殺す毒と、どんな状況でも生き返らす神薬。
秘薬シリーズは図鑑に載らないので、他にもあったのかもしれないが、わたしがわかるのはその二つだ。
ネットでも攻略情報を探してみたけれど、そもそも、万道具の図鑑コンプのための情報ですら結構苦労したのだ。攻略サイトとかもあったけれど、新たに解放されたマップに気が付かないのか、秘薬シリーズは記載されていなかった。
他のマップと違って、新たにマップが解放されました、というウインドウが出てこないし、わたしだって、たまたまフィールドのドットに違和感を覚えなければ気が付かないままだっただろう。
あのときは確か図鑑をコンプした直後で、折角なら、売上金カンストさせるか、と何日か同じフィールドにこもって素材採集をしていたから、フィールドマップのドットが少しだけ変わっていることに気が付いたのだ。
だから、一度図鑑をコンプして、その後、またフィールドに何日もこもっているようなわたしみたいな人間か、よっぽど記憶力のいい人間以外は気が付かなかったんだろう。
詳細な情報は見つからず、手探りで作ったのも二つだけ。他は分からないままだ。折角だからこっちでも再現できるか試してみたい気持ちはある。
毒のほうは怖くて作りたくないが、神薬のほうは役立ちそうなので作って損はないだろう。
「紫司馬救済も見てみたかったのだけど……知らないのならしたかないわね」
「ご期待に沿えずすみません」
「いや、秘薬シリーズっていう都市伝説が実在したってわかっただけでもいいわ。すごく気になってたから」
わたしたちが生前のプレイ談議に花を咲かせていると、カララ、と入り口の引き戸が開かれた。
姫鶴はびくりと肩を跳ねさせ、わたしは慌てて口をつぐんだ。
前世の記憶があり、この世界はゲームだったのだ、なんて話を聞かれたら頭がおかしくなったかと思われてしまうだろう。それは流石にごめん被る。
わたしたちにとっては『ゲームに似た世界』に思えても、この世界の住人からしたら現実世界なのだから。




