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 わたしはのんきに考えていたが、姫鶴はそうじゃないらしい。


「でも、油断はできないわ。本来のイベントだと、姫鶴は万結を貶めようと罠を張るのに失敗して、大怪我してしばらく退場するのよ。中盤イベントまで戻ってこないほどの怪我だもの、相当よね……。絶対嫌だわ」


 そう言う彼女の顔には悲壮感が漂っていた。すでに攻略キャラとゴールしたのなら、安心できるもんじゃないのだろうか、とも思ったが、彼女の中ではそうじゃないのだろう。

 幼い頃から死亡フラグをへし折るのに躍起になっていたのなら、彼女が安心できるゴールは、決して攻略キャラが自分を好きになってくれるタイミングではなく、物語終了時なのだろう。……どんなエンディングなのか、わたしは全く分からないんだけど。やってないからね。

 でもまあ、普通に考えたら卒業、とかなのかなあ。卒業して一緒に店を始める、という感じだろうか。うん、確かにそれなら納得の展開だ。いかにもそれっぽい。


 一人で勝手に納得していると、ふと、もう一度、姫鶴は店の外を気にしだす。ガラスの引き戸や、店内を確認するために設置した大きな窓からは、赤希も詩黄も見えない。

 二人がいないことをしっかりと確認した姫鶴は、再び声をひそめて、わたしに新たな質問をしてきた。


「……ねえ、それはそれとして。貴女、免許皆伝なのよね?」


 外を念のため、もう一度確認した、ということは……これが本題なのかな。

 不思議に思いながらも、わたしは肯定の返事をしておく。


 恋愛パートとはあまり関係ないやりこみ要素が強いからか、免許皆伝までだどりつくのは珍しい、とネットの掲示板で見たことがある。プレイヤーの半数くらいは、コンプすると言ったらエンディングやスチルのことを指すみたいだった。


 多分、姫鶴に転生しちゃった彼女もそうなのだろうな、と察しはつく。魚提灯は、素材集めも制作もさほど難しくはないが恋愛パートには関係ない万道具なのだ。だから、彼女も万道具の図鑑をコンプしていなくて、わたしにそんなことを聞くのだろう。

 万道具の図鑑には、一覧に並ぶ万道具のアイコンの右上に、ハートマークがついているものがある。キャラのイメージカラーのハートがついていると、そのイメージカラーのキャラのルートで必要になる万道具であるという意味で、恋愛パートに必要な万道具は、やり込み要素のためだけの万道具と区別がされているのだ。


 でも、魚提灯はどの種類もハートマークがついていなかったから、恋愛パートには登場していないと予想がつく。……こんなにも可愛いのに。

 ちょっと不満はあるものの、どの万道具も魅力的であっても、流石に本編で全ての数を出すのは無理があるだろう、と流石のわたしでも分かる。強引に全部出そうとすれば、物語が破綻してしまうのは簡単に想像がつく。

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