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 なんてことを考えていると、姫鶴が「……詩黄、赤希、ちょっと外に出てて」と言い出した。全くもってピンと来てないことを察してくれたようだ。


「その……ええと……そう、女には、男に知られないで買いたいものがあるのよ! ほら、 男にもあるでしょ」


 誤魔化すように姫鶴がそんなことを言う。あまりにも棒読みで、嘘が下手だな、と思っていたのだが、詩黄も赤希も顔を赤くして、店の外へと出て行った。何を買うと想像したんだろうなあ。


「あ、じゃあ、僕はこの縁金魚、工房に持って行って、そのまま工房から別の配達に向かいますね」


 詩黄と赤希とは真逆の反応で、ごく自然に透くんは店から工房へと水槽を持って消えた。

 誰かに内緒で買い物をしたい、という客は結構いるので、透くんは慣れているんだろう。やましいもの、というだけではなく、サプライズのためのプレゼント注文なんかもあるので、彼は後者の方だと思ったに違いない。姫鶴はちらちらと赤希と詩黄の方を見ていたから、二人、もしくはそのどちらかへのプレゼントだと判断したのだ、きっと。

 ちなみに工房から外に繋がる扉はある。大きかったり重かったりする、配送込みの万道具は店を経由して外に出そうとすると大変なのだ。


 店に二人きりになったのを確認した姫鶴は、ひそひそと声をひそめてわたしに聞いてきた。


「貴女、いくら本編に興味がないと言ったって、一人くらい、少しはプレイしてないの?」


「わたしにとっては経営パートが本編ですよ」


 姫鶴の言い方にちょっとむっとしながら、わたしも小声で返す。本当に恋愛パートをやっていない、という返事の代わりになったのだろう。姫鶴が、今回必要になった万道具の使い道を説明してくれる。


「この時期は学園祭があるのよ。……本編だと最初の大きなイベント扱いね。学園祭で攻略対象との関係が近づきだすの。で、学園祭準備で泊まり込みになるのだけど、夜に肝試しをすることになって、そこで迷子になる……のよ、多分」


 なんだかはっきりしない物言いだか、確かにその状況になるなら、縁金魚の水提灯があれば便利だろう。黎明学園に通うことはなかったものの、あそこはこのあたりで一番大きい建物だし、迷子になったら面倒だろうな、というのは想像がつく。


「本当は迷子になるの、ヒロインのイベントなんだけど、貴女が入学しないから、何故か学園内でのヒロインイベント、私が全部引き受けてるのよね」


 それはもう、完全に万結と姫鶴の立場が入れ替わっているのでは? ヒロインとしての『万結』に未練はないので、存分に作中イベントを楽しんでくれてかまわないのだが。

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