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「――それで、本日はどのようなご用件でしょうか? 万道具の修理ですか?」


 ちら、とわたしは透くんの持っているものを見ながら、姫鶴へと聞いた。

 結構なサイズだし、修理に時間がかかるかもな、と、どんな万道具だろうかと、候補を思い浮かべていたわたしだったが、姫鶴は首を横に振った。


「これで縁提灯を作ってほしいの」


 透くんがカウンターに荷物を置き、被せてあった布を取る。布の下からは水槽が現れ、中から淡く光る金魚が数匹現れた。

 その数匹の金魚に、わたしは釘付けになる。


「ほわぁああ、すごい……本物の縁金魚えにしきんぎょだ……! 本当に、本物だ……!」


 胸が高鳴り、気分が高揚するのが抑えられない。

 カウンターの上に置かれた水槽に入る、小さな数匹の金魚。うっすらと金色に光る、比較的珍しい魚だ。

 しかもこの水槽、万道具だ。重さが軽くなって、どんなサイズになっても、床抜けを心配しなくていいシリーズのやつ。このサイズならそこまで高くはないだろうけど、それでも同じ大きさの、普通の水槽よりは圧倒的に高い。ひゅう、金持ち!


 前世だったらスマホを取り出し、写真をバシバシとっていただろう。

 わたしの食いつき方が異常だったのか、ちょっと引いたような姫鶴の声が聞こえてくる。 

 でも、これがテンション上がらずにいられるだろうか!


「こんな素材を扱わせていただけるとは……! ありがとうございます、最高です!」


「いや、私も縁提灯は欲しいし……。貴女、本当に万道具が好きなのね」


「はいっ」


 優雅に泳ぐ縁金魚を見るだけで、わくわくが止まらない。


 縁提灯は、提灯型の水の中に発光する特殊な魚を入れて使う魚提灯の一種で、わたしが特別好きな万道具の一つでもある。見た目がすごくファンタジーっぽいのだ。

 形状としては、提灯の明かりを覆う部分が紙ではなく、水球になっている。何か容器に入れるのではなく、本当に水球を作るのだ。表面に特殊な植物油を塗り、水形状をキープする。その中に発光する魚を閉じ込める、というわけだ。普通の提灯が一般的だけど、手提げ提灯版とか、最近だとランタンっぽい形のものも出回っているようだ。ちなみに、行燈バージョンもある。名前は流石に魚提灯ではないが。


 なお、魚の餌は光によって来る虫で賄う仕組みになっている。底のほうに浄化石という別の万道具を入れておけば常に水は綺麗なままで、魚の寿命まで使い続けることができるので普通の提灯よりはコスパがいい。

 まあ、命を使う道具ではあるので、好き嫌いはハッキリ分かれてしまうのだが。

 自分のペットである魚を入れる人もいるので、一概に命を使いつぶしていると言えないのが現状だ。


 中に入れる魚は人それぞれだが、今回入れるのは縁金魚。

 縁金魚を入れた縁提灯はただの魚提灯ではない。縁金魚自体が特別な種で、縁提灯を持つと迷子にならないのだ。進むべき道を示し、その方向へと明かりが伸びる。どういう原理かは知らないけれど、まあファンタジーだし。


 科学で証明することができないものがわんさかある世界で理屈を考えるのは無意味というか、野暮だろう。

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