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 わたしの微妙な反応に、自分が何を言ったのか分かったのだろう。ハッとなった赤希が「違げえ!」と慌てたように声を荒げた。


「いや、あくまで俺らにはもう心に決めた姫様がいるってだけで、決してアンタがブスって言いたかったわけじゃねえんだ!」


 分かってるよ、分かってる。好みは人それぞれだし、好きな子がいたら、他の子なんて目に入らないよね。

 それは分かってるんだけど、必死に否定すればするほど、その言い訳がつくろった嘘のように聞こえるからやめたほうがいいぞ。


 慌てふためく赤希に、ことの発端が自らにあるにも関わらず他人事のようにしている詩黄、その二人を見てそろそろ返ってくれないかな、と思い出すわたし。いや、今はたまたま客がいないタイミングだからいいけれど、他に客が来たら迷惑になってしまう。めちゃくちゃ繁盛している店というわけではないけど、それなりに客は来るのだ。


 ……もしかして、この騒ぎが外に漏れ出ていて客が寄ってこない、とかではないよね……?

 わたしは嫌なことを考えてしまい、さっさと帰ってもらおうかな、と思い出す。一応謝ってもらったし、謝罪の菓子折りである羊羹を受け取れば、話を切り上げたって問題ないだろう。


 そう思って口を開いたとき――店の入口のドアベルが鳴った。


「いらっしゃいませ――あっ」


「……貴方たち、何してるの?」


 客は姫鶴だった。丁度タイミングが重なったのか、透くんもいる。配達が終わったらしいが――手に持っている物はなんだろう。結構大きいサイズの、黒い布が被せられているものを持っている。……段ボール? いや、この世界段ボールないんだっけ。じゃあ、何かの木箱か?


 姫鶴の姿を視認した詩黄は、さっきのぶすくれた顔はどこへやら。一瞬できゅるん、とでも効果音がつきそうなあざとい表情へと変化した。あまりにも早い猫を被る速度に、赤希が引いたような顔をした。


「こ、こいつが――」


「この間、ここのお店に来たときに迷惑かけちゃって、謝りにきてたの!」


 赤希の説明を横取りした詩黄だったが、謝れるボク偉いでしょ、という副音声が聞こえてくるような声音だった。でも、姫鶴にはその副音声が聞こえていないらしい。「あら、偉いわね」なんて言っている。鈍感系ヒロインか?

 なんだかもう、面倒くさくなったわたしは、「そうなんですよー」と適当に返事をして説明を放棄した。


 さりげなく、姫鶴からは見えないように、わたしは羊羹をカウンター下に入れて赤希の方を見た。

 この話はこれで終わりね。

 そのアイコンタクトが通じたのか、赤希は不満そうだったが、それ以上何も言うことはなく、詩黄の言う『迷惑』が何だったのか、姫鶴に告げ口することもなかった。

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