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――と、思ったのはいいけれど。
さて、どうしたものか。
姫鶴は紫司馬の救済ルートは何でも生き返らせることができる秘薬を使って、紫司馬に殺されたはずの赤希を生き返らせると見られる、という都市伝説がある、とは言っていたけれど……果たして、本当にそうなのだろうか?
こうして、わたしが殺され損ねた上で、再度危害を加えられているところを見るに、もっと他にも必要なフラグはありそうである。
わたしはストーリーパートをやっていないから、考察する材料すらない。
……いや、もう、ゲーム本編をプレイしていないから分からない、やっておけばよかった、と考えるのはやめよう。今更そんなことを言ってもどうしようもないし、なにより、その知識が生きる段階なのか、不明だし。
わたしにできることで、この窮地をどうにかするのだ。
となると、参考になるのは祖父がどうやって透くんを救ったか、である。
「――透くん。話したくないかもしれないけど、おじいちゃんがどうやって透くんを保護したのか、教えてくれる?」
透くんと同じことをすれば、遠からずとも、紫司馬をどうにかできると思ったのだ。
彼は一族から逃げ出したくて、それでも逃げられなくて、逃げ切った透くんを恨み、妬み、危害を加え絶望を与えようとしている。それならば、そもそも、彼もまた逃げられればいいのではないだろうか、と思ったのだが――。
透くんは、力なく首を横に振った。
「僕と彼では違います。僕は一族の教育からも逃げ、ころ――……いえ、『仕事』ができない厄介者扱いをされていました。とどのつまり、役立たずだと思われるまで何もしないで、捨てられるのを待っていただけなんです。そこを、功甲さんに拾われました」
……すでに『仕事』をしている紫司馬は、同じ手が使えない、ということか。『仕事』とは言わずもがな、暗殺のことだろう。
「僕は何をされても、どう脅されても、何もしてこなかった、一族にとっての役立たず。たいした情報も持っていないので、どこかへ情報を流したとろで本気にしてもらえないくらいのことしか知っていません。でも、彼は、きっと、違う」
もし、今から逃げようとしたら、きっと口封じの追手が来る。
透くんはそう言葉にした。
「やっぱり、僕が――」
透くんがそう言って立ち上がろうとしたとき、ふわ、と独特の香りが匂ってきた。普段の透くんらしくない匂い。これは――多分、ギメネジアの花の匂いだ。お香系の万道具の追加素材としてよく使われる花で、匂いが馬鹿みたいに強いため、いつまでも残る。どちらかというと、透くんよりは紫司馬っぽい匂い。
気が付かなかったけれど、もしかしたら、紫司馬は常備している紛い香の中に、ギメネジアのものを使ったやつも持っているのだろうか。ギメネジアを使うと、お香の効果が強化される。
やはり、それほどまでに彼は暗殺業に剣を抱いていて――。
――そこまで思いついて、ぱち、とパズルのピースが上手くハマるように、一つの作戦を思いついた。




