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 一瞬、透くんの目線がそらされたが、すぐに覚悟を決めたようにこちらを見た。


「――貴女が、好きだからに決まっているでしょう」


「エッ」


 思ってもみない言葉が飛び出てきて、わたしは随分と、雰囲気にそぐわない間抜けな声を出してしまった。

 わたしを守ると約束してくれたときのことを持ち出すのだと思っていたのだ。

 わたしが驚いたのが予想外だったのか、透くんの方も驚いている。


「今ここで告白しろっていう催促ではなかったんですか」


「え、あ、あれっ!? そういう意味になる……の? なる、のかも……」


 わたしはあの約束の話をするつもりだったけれど、透くんの、覚悟決まった原動力がわたしへの好意だとするのなら、確かに、告白の強要になってしまうのか。全然考えてもみなかった。えっ、やば、こんな状況で告白をさせるなんてヤバい奴じゃん、わたし。

 自分がやらかしたことに気が付き、自分の鈍感さが致命的だったことを、身をもって思い知らされた。二度と姫鶴に反論できない。


「――……本当は、貴女に、兄と呼ばれ、構われるのが、嬉しかったんです」


 ぽつり、ぽつり、と彼が話始める。恥ずかしさと情けなさに散漫していた意識が透くんに戻る。


「ずっと、後ろ暗い場所で生きてきた僕にとって、貴女はまぶしかった。いつも、万道具に目を輝かせて、好きなことをして笑っている貴女は、平和そのものに見えた。でも――あんなことが起きたから」


 あんなこと。

 言わずもがな、子供の頃のわたしが刺されたことだろう。


「僕が、貴女を守るのは義務だと思ったし――同時に、貴女が貴女のままで笑っていてくれることは、僕にとっても望みなんです。貴女が僕のせいで刺されたことに対する負い目だけじゃない。貴女が好きだから、大切だから、貴女を守りたいんです」


 まっすぐにわたしを見つめてくる透くん。何かを言い返さなきゃ、と言葉を探して、わたしは何度か口を開閉した後、ごくり、と唾を飲み込んだ。


「なら――そこに、透くんもいなきゃ駄目だよ」


 わたしは、彼の手に添えるだけだった手のひらに力をこめ、彼の手を握りしめる。


「わたしは、透くんと一緒に、あの店をやりたい。いい万道具が作れたときには、一番に透くんに見せたい。万道具に夢中になって、寝るのを忘れたときには、透くんに叱られたい。馬鹿みたいに舞い込んだ仕事にひいひい言いながら二人でさばいて、全部終わったらお疲れ様って言い合いたい」


 昨晩、紫司馬に記憶を奪われて、生きる目標や使命を感じなかったけれど、今なら分かる。

 わたしはきっと、透くんと一緒にあの店をやるために、この世界に転生してきたのだ。

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