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 縁提灯の光を頼りに走り、たどり着いたのは薄暮の森だった。あちこち走り回っていたので、すっかり陽が傾き始めている。


 途中までは舗装された道を歩いていたのだが、明らかに道から外れた方角を差すようになったので、わたしは周囲を確認し、誰にも見られていないことをチェックする。ここまできて引き留められたら元も子もない。

 舗装された道に添うようにして設置されたロープをまたぎ、わたしは道なき道を歩いていく。


 道順に選ばれなかっただけあって、どんどんと険しい道になっていく。この先に、透くんが本当にいるのか? と一抹の不安を抱きながらも、わたしは足を止めなかった。ガサガサと草をかき分けながら、わたしは透くんを探す。


 ふと、足跡のようなものを見つける。くっきりとついているわけじゃないが、明らかに、誰かが草を踏みしめた跡がある。しかも、獣のものではなく、人の靴底の形をしている。……流石に、透くんの靴のものかどうかは分からないけれど。

 つい最近、誰かが通ったと思われる足跡の先を、縁提灯が照らしている。

 わたしは迷わず、その跡を追う。


 ――と。


「――――」


 誰かの声が聞こえた。明らかに何か、言い合っている様子。ここまで来たら、縁提灯がなくとも何とかなるけれど、縁提灯は中の縁金魚が死ぬまで光り続ける。魚提灯は、一度光り始めたら、特定のものでさえぎらない限り、中の魚が死ぬまで提灯としての役割を果たし続ける。なので、光り続けるのは縁提灯も同じ。

 このまま持ち続けていたら、なるべくこっそり近付いたところで、光ってバレるだろう。陽が落ちてきているので、日中よりもずっと目立つだろうし。


 なので、少し迷ったのち、縁提灯を置いて、声のする方へと向かった。

 なるべく、音を立てないように、心がけて。わたしはただの一般人だし、草のお生い茂る場所を歩くので、完全に音を消すことはできない。それでも、会話がヒートアップしているのか、声音の雰囲気が険悪になりつつも、わたしに気が付かないようで、会話が途切れることはない。


 話し声が段々と鮮明になってきたとき――。


「――もうやめてくれ!」


 怒鳴り声が聞こえてきた。


 ――透くんの声だ!


 普段、彼からは絶対聞けないような声の荒げ方にびっくりしたけれど、それ以上に、彼が生きていることに安心した。


 こっそりと影から見てみると――わたしの予想通り。

 紫司馬と対峙する、透くんの後姿が見えた。

 二人とも、怪我をしている様子はない。わたしは間に合ったのだ。

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