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 家に帰って、工房にこもり、サクッと万道具を作る。透くんを探すための万道具――縁提灯を。


 実は、姫鶴に依頼されたときに預かった縁金魚を、数匹譲って貰っていたのである。一匹だけでも結構な金額の縁金魚をくれたのは、多分、わたしが相当縁金魚に固執していたからである。あのときの姫鶴を思い出すと、わたしに引いたような顔をしていたな、という記憶しかない。


 魚提灯の素材も全て揃っている。揃っている、というか、ほとんど出しっぱなし。整理整頓はするほうだけれど、最近作った万道具の素材はすぐに取り出しやすい手前の方に置くようにしている。

 もし、作った直後に、作り直しや欠陥を修理することになったら、いちいち素材を探し直すのが面倒だから。もっとも、今まで作って売った万道具が不良品だと戻ってきたことなど、そうそうないけれど。


「――よし」


 わたしはあっという間に万道具を作り終える。まだここから走るつもりでいるので、姫鶴に作ったものよりも随分小型なもの。手提げ提灯タイプではなく、吊り下げの、ランタンみたいな形状にした。走っても中の水がこぼれたり、縁提灯が崩れたりするようなことはないけれど、単純に走りやすさ重視である。


「縁金魚。わたしに行くべき道を――透くんに会える道を、教えて。お願い……!」


 縁提灯は進むべき道を教えてくれる、魚提灯の中でも特別中の特別。今、わたしが明確に求めている『道』があるのならば、きっと縁金魚は、わたしにその『道』を教えてくれる。

 魚相手に言葉が通じるわけでもないけれど、わたしは思わず、祈るように縁金魚に話しかける。

 魚特有の、感情の分からない目が、こちらを向いたような気がした。


「――!」


 ぼや、と縁金魚が光り始める。辺りを明るくするのは勿論、分かりやすく、一つの方角に光が伸びていた。

 この光の差す方角に行けば、透くんに会える。

 わたしは使っていた道具を片付けもせずそのままに、縁提灯を持って立ち上がる。


「――ッ、これも!」


 走って工房を出ようとしたわたしは、慌てて出入口の横に引っ掻けていた鞄を手に取った。

 昔、紫司馬に刺されたときには持っていなかった、簡単な治療道具や人を呼ぶための万道具などを始めとした、様々な道具が入っている鞄。祖父が、森に入るときには必ず持っていけ、と言っていたセットが入っているものだ。


 何があるか分からないのだから、これを持っていくに限る。

 もう二度と、同じ過ちを繰り返さないように。

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