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会話の聞こえてくる方を見ると、先ほど、正門のところにいて野次馬をさばいていた守衛らしき人と同じ制服を来た男性二人組がいた。彼らもまた、守衛なのだろう。今は見回り、といったところか? あんな事件があった翌日なのだから、見回りの数を増やすのも当然だ。
二人組を見つけたわたしは、思わず、身をかがめる。学校の敷地は高い柵で覆われていて、向こうからもこっちからも見えるものの、下の方には低木が植えられているので、かがめばきっと向こうからは見えないだろう。まあ、こっち側の通りから見たら、不審人物に見えてしまうかもしれないが。
誰もここを通らないことを願いつつ、わたしは二人の会話に耳を済ませる。
「念入りに万道具で隠蔽工作してて発覚が遅れたらしい」
「どうしてそんなにも出たがるかねえ……。元から全寮制なんだから、一日や二日、学園外に出られなくても不自由ないだろうに」
隠蔽工作をしていた、ということは、今学園にいないことに気が付いたとしても、実際はもっと前にいなくなっていたのだろう。……一体、いつからいないんだろう。
「見つけたらさっきの子らと一緒で反省室行きでいいらしい。仕事増やさないでほしいよな」
そんな会話をしながら、守衛たちは歩いてどこかへ行ったようで、雑談に切り替わった声が遠くに移動していく。
わたしは守衛に見つからないように、こっそりと立ち上がる。
紫司馬が学園にいたら何か聞けるかも、もしくは、一緒に透くんがいるのかも、と思っていたけれど、これじゃあ駄目だ。今、この学園に彼はいないのだから。
「どうやって探そう……」
わたしは思わず親指の爪を噛みながら、いい案が思い浮かばないことにいら立っていた。
スマホがあって電話ができたら――いや、そもそも、この状況じゃ透くんは電話にでてくれないかもしれない。どこにいるのかも分からない人物をどうやって探せば――あ。
「こういうときのための万道具……!」
わたしは家に一度帰るため、再び走り出した。
万道具は、前世の家電を再現したものも多いが――基本は、不思議な魔法のような道具。
人を探すものだって、ある――わたしは、知っている。
どうして今になるまで、気が付かなかったのか。無駄に走ってしまった。早く気が付けば、それだけ彼を探す時間も短くできただろうに。
そんなことも思いつかないほど、焦りと不安に支配されていたのだと、このときのわたしは気が付くことはなかった。当然、その考えに至るほど、余裕がなかったからである。




