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恋する天然酵母  作者: はぎわら 歓


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10/13

10 お付き合い

 弘樹はぷっとふき出して「おかしな子だな」とつぶやいた。連絡先を交換しようと言いかけるとフミは走り去ってしまった。


やっぱりナナに似てる。ナナに煮干しを見せると丸い目を向け「いいよ」と言うと弘樹の手から煮干しを咥えて、奪い、逃走するようにどこかへ走り去る。連絡先は姉貴に聞けばいいかと思い車を走らせた。


 部屋に戻り呼吸を整えてフミはさっきの状況を思い返した。(いいよって言ってもらえた)


自分の告白にも弘樹の答えにも驚いていて、部屋でがくがく笑う膝を抑えた。落ち着いたので入浴をしベッドに潜り込んだ。眠る前にスマフォをチェックするとメールが来ていた。弘樹だった。どうやら美里から聞いて送ってくれたようだ。


『吉川弘樹です。姉に聞きました。これからよろしくね』


フミも返信した。


『連絡ありがとうございます。遅くなってすみません。こちらこそよろしく願いします。お休みなさい』


送るとすぐに返ってきた。


『おやすみ』


フミは声に出して「おやすみ」とつぶやき唇に触れながら優しい甘味を感じて眠りについた。


 付き合い始めて二か月が過ぎようとしていた。弘樹から先に聞いていたのであろう美里はフミの報告に微笑んで「仲良くしてやってね」と言うだけだった。


休日はやはり合わない。弘樹は土日祝がきっちり休みでフミは水曜日のみだった。ただ雨の日は早く終えたり休んで土日に出勤するので、フミは火曜日の晩にさかさまのてるてる坊主を吊るした。


今日もてるてる坊主を逆さに吊って眠った。翌朝いつもの習慣で四時に起きる。まだ真っ暗だがなんとなくパラパラと雨音が聞こえる。フミはがばっと起き上がって窓を開けて外を見た。


雨だ。


やった。


小さくガッツポーズをしてまた布団にもぐってスマフォを優しく撫でた。いつの間にか二度寝をしていたフミの耳に、メールの着信音が聴こえた。弘樹だ。まだガラケーの弘樹はメールを寄こす。さっとつかんでメールをチェックする。


『今日午後から空くけど会える?』


即返信する。


『はい。会いたいです』


『一時に家に迎えに行くよ』


『はい^^』


平日は家族がいない。夜、送ってもらうときは近所のスーパーで車から降ろしてもらうが、平日の昼は家に迎えに来てくれた。


まだ朝六時だ。家族はみな夢の中だ。しかしもう目はすっかり冴えていて今日の午後のことを思う。フミはある決心をしていた。深呼吸をしてからベッドを抜け出し静かに台所へ向かう。今から弘樹の好きなクロワッサンを焼くのだ。美味しくできるように祈りを込めて。

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