リプレイ
ホラーものは初です。と言っても、ひぇっ、位です
色々と伏線を置いておきましたが分かりづらかったらすみません。
オチがちゃんとあるので最後まで読んでいただけたらな、と思います。
では、楽しんで行ってください。
「いつまで・・・歩けば・・・いいんだ・・・」
季節は八月。嫌いな夏。
そして山。上まで続くコンクリート製の道路がなかったら、今頃どうなっていたことやら。
この山脈はトンネルなんてものが掘られておらず、山の中にデーンと敷かれているだけだ。
当然のとおり、車は通る。今では殆んど見かけないが。
多めに持ってきていたはずの天然水も残り1本になったしまった。
出発した時間が7時だから、ちょうど2時間も歩き続けていることになる。
最初の頃は忌まわしき太陽のせいで、汗が滝、それこそナイアガラ並みに流れ出ていたが、こう夜も更けると気温は下がり時々吹く風には肌寒さも覚える程だ。
「おい・・・!タケシ!頂上はっ!まだかっ!」
ただ、疲れは取れない。
体育会系の大学の同級生、で俺の古くからの親友と言える少ない友、タケシはまだ余裕そうに前を行く。
しかしタケシも身体から液体は出るようで、先ほど大好きな『つぶつぶなオレンジジュース 2L』をそれはそれは名残惜しそうに飲み干した。
こんな物好きしかしない山登りなど、コイツの頼みじゃなければ嫌われてでも断っていただろう。
今となってはそうまでしてでも断るべきだったとさえ思っているが・・・
「後、もうちょいだな・・・。多分」
「さっきもっ!それ・・・聞いた・・・ぞ?」
「もうマジ。ほれ、ガンバれ、ガンバれ」
「煽るな・・・」
登山服は吸汗性、速乾性に売りと言っていたが自分のほとばしる汗には分が悪かったようで、全然乾かない。ポリエチレンなのが相まって肌に張り付くわ、張り付くわ。もう脱いでしまいたいほどだ。
この服は某有名スポーツ店に売っていた青と緑の中々にイケてる代物だった。
ので、衝動買いしてみたところ、着た回数はたったの二回と直ぐにタンスの肥やしになってしまい、本日は、こいつを使ってやることが目的の半分となっている。
そして、もう半分・・・ いや80%は・・・
「お前・・・本当に・・・モグ、モグをくれるのか・・・?」
モグモグとは 『アニマル・フレンズ・オンライン』 という擬人化された獣の仮想世界に迷い込んだ黒髪の少年が剣を振り回して、女の子と結婚する物語に出てくるモグラの幼女だ。
彼女の話をすると危ない方向に行ってしまいそうなので割愛させてもらう。
ある日、HPで100名限りに限定フィギアが当たるイベントが起こる事を知り当然応募した。
それで、同じく『A・F・O』愛好家であるタケシ(サーバルキャットのサーベルが好き)も一緒になって応募したのだが、なんとこいつは当選したのである!モグモグに!
押しキャラじゃなくても愛せる系タケシは持っていきやがったのだ。許すまじ。
で、まんまと餌に釣られてしまったと、本当に酷く、ありがたい話だ。
「やるよ。俺、サーベル押しだから」
「ならいい・・・」
「ほら、天生開放しろよ。そしたら頂上まですぐだぜ」
「・・・。すごいすごーい・・・」
今まで自称動ける系デブと言ってきたが改名が必要になった。
動けるけど登山は無理系デブに変えよう。
空に近いだけあって星や月の光が辺りを虚ろに照らしてくれるが、そろそろライトを取り出した。 100円ショップに売っていた白いライトが光を放ち、前を行くタケシの足まで照らされる。
「お、ライトだ。いいな~。俺も持ってくればよかった」
「お前・・・それぐらい・・・持って来いよ・・・」
「いや~夏だし、山だし。いらんかな~って」
「夜だからだし・・・てか・・・なんで夜なんだ・・・?」
「ありゃ。言ってなかったか」
登山者なんて周りに誰もいないし、ここから見える星空も言うて絶景ではない。
ん、おっと、あれは『へびつかい座』そして頭を合わせるように『ヘルクレス座』も見える。
俺の好きな星座が見れた。なんと絶景だろう。
こう涼しさと星があるだけ夜はマシだと思える。
「ここな、登山サークルで結構有名な山らしくてよ。私ら富士山行くからどうだったか見てきて~って言われてな。6回分の昼飯代で手を打った。調査みたいなやつだ」
「何が有名なのか・・・詳しく」
「何でも食べたゴミを持ち帰るとそれが食べる前に戻ってるらしいんだ」
あ~、もったいないな~、と先に落ちていた麦茶のペットボトルを蹴った。
そして、タケシはもう空っぽの『つぶつぶなオレンジジュース 2L』に頬ずりをする。
「で・・・?なんで夜・・・?そして・・・なんで俺・・・?」
「夜って色々起こりそうな気がするじゃん。そしてお前は超常現象信じないだろ?」
「科学で表せないものは・・・三次元で起こらない・・・」
「な?どうなるか見たいんだよ。『つぶオレ』とお前の表情」
幽霊はいない。まずあいつらは何なんだ?気体なのか個体なのか。生きてるのか生きてないのか。生きてるとしたら、多細胞なのか単細胞なのか。臓器はあるのかないのか。なぜ壁をそう簡単に壁をすり抜けるのか。もはや幽霊とは何か。
考えるだけ時間の無駄である。
「でも本当だったら凄いだろ?『つぶオレ』が4Lだぜ!?」
それで喜ぶ奴はそうそういないと思うがな・・・
もしそうなら俺はカードパックを箱ごと持ってきてカードを増やすかな。
まあ、取り出したカードらまでも元に戻ると思うがな。
自分にしても馬鹿なことを考えたと思いつつ、先を行くとタケシは何故か立ち止まって・・・その原因が見えてしまった。
かなりの角度、言うて50度程のカーブに差し掛かった場所。
トラックが横倒れしていた。横転事故というものだ。
このトラックは先ほど見かけた車だな。半導体チップなどを一度に運ぶ大型のトラック。
そして、辺りに香る微かな“鉄”の匂い。
生物の解体をした後の実験室の匂いだ、そこまで強くはないが。
嫌な想像が一つや二つ思いつく。
「おい!ライトを貸してくれ!」
バトンパスのようにライトを渡すと、タケシはトラックで隠れてしまった“事実”を見に行った。
見てるこちらの身としても、緊張や不安を感じてしまう。
タケシが恐る恐る覗き見ると、次の瞬間には青い顔をして戻ってきた。
口をパクパクと開け閉めし、何かを声に出そうとしている。
「・・・警察か?救急車か?」
「け、警察っ」
「・・・・・・マジか」
運転手が見えない位で予想はついていたが、やはり衝撃的なもんだよな。
もしかしたら自分たちが事故に遭ってたかもしれないし・・・。
俺は携帯に 110 と打ち込み電話を掛ける。
「なあ。助けれたりは・・・?」
俺は無言で首を振った。
衝突事故で血が出ていることがもう手遅れだと分かる。中身が潰れたか、折れて飛び出たか、擦れた程度で香るほど量は出ないし、既に酸化してるから時間も結構経っている。
そもそも俺らに何ができる?
今、最もやるべきことはできる人に任せること。
「・・・すいません。警察の方ですか? ・・・。・・・」
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その後、警察には色々聞かれた。
場所、状況(信号があったか、道に異常はなかったかなど)車のナンバー、事故現場の撮影や俺とタケシの本人情報だったりと協力的に対応したので、思いのほか早く終わった。
まだ、夢見心地と言うべきか死んでいることを理解ができない。
ちっさい頃の愛犬が寿命で永眠した時に似ている。
ただ、俺とは別で先ほどから冷静さを取り戻したタケシは現実を受け止めていた。
悲しそうな目で倒れたトラックを見つめていた。
「・・・帰ろう」
「ああ。そうだな。帰ろうか」
以外にも警察の方からは今日は帰っていい、と帰宅の許可は貰っていた。
さようなら、心の中で呟いて俺は後ろを向いた。
俺らは無言になり、山を下っていくのであった。
~~~~~
「で、タケシ?何故俺たちはここにいる?」
「リベンジだ」
あの後、電車を気にしていたらホテル取ってるぞ、とタケシが衝撃を告白をし、なぜかダブルベッドの部屋で寝ることになったのだが腐女子さん達が期待するようなことが起きるはずもなく平和に朝を迎えられた。
まるで昨日の事が無かったこと、いや日常の一部になったかのような、起こるべくして起こったことのように感じられ、今になってはどうだっていいことに記憶の分類がされている。
寝ることが困った時の解決法、なんてことを聞いたことがあるが本当にそうだと身を持って体験した。
それで帰る準備をするのかと思いきや・・・
「水、買いに行くぞ」
「へっ?」
なんと、こいつは昨日のこと忘れたのかまたもあの山に登ろうとしていたのだ。
あれよあれよと時間が進み、気付けば5時も終わろうとしていた。
・・・起きた時間が12時過ぎだったがな。
山に着いて驚いたことは、通行止めをしていなかったこと。
事故が起きれば絶対にするもんだと思っていたが、ここらは大事な輸送経路だったし、そういう処理をする人たちが頑張ったんだ、と思考に区切りをつけた。
「なんだよ、あのコンビニ!『つぶオレ』がないとかおかしいだろ!?」
「こっちのセリフだよ。『ナイ水』がなかったんだ。訴えてやる」
全国展開しているコンビニエンスストア『エイトトウェルヴ』には『ナイプスの天然水 500ML』が売っていなかった。
『ナイ水』は水と書いているはずなのに抹茶の味がする紫色の飲み物だ。
あまりポピュラーではないがコアなファンが多く、発売から20年は経っているが未だに売れている。
のにも関わらず売っていないとは、起訴!法廷で会おう!
「お前、あれはおかしいって味覚がぶっ壊れてるよ」
「お?『ナイ水』と俺に喧嘩を吹っ掛けるのか?ウイルス送り込むぞ?」
「やめい。送り込むなら『つぶオレ』にしろ」
「てかあのホテル一泊何円だ?昼食6回分じゃ損してね?」
「へ?・・・ほんまや!じゃあ、割り勘というわけで・・・」
「や!だ!」
山登り二日目だからなのかあまり疲れずに歩けている。
バカ話もしているほどなので、動けるけど登山は無理系デブに改名しなくても良さそうだ。
ここは昨日のあそこらへんなのかな?と考えながら歩くのも楽しいもんだと思えてきた。
さっそく飲み終わった麦茶のボトル投げ捨てるのであった。
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そして俺らは辿りつく。
そこは昨日、事故が起こった場所。
このカーブには見覚えがあったのだ。
「なあ、タケシ・・・?」
「・・・・・・」
そこには何もなかった。
事故が起こった名残が何一つの残っていない。
部品や擦れた跡、血痕なんてそう無くなるものじゃない
なぜか、怖い。
ホラーものの映画の怖さじゃなく、本能的な冷たい何か。
「どういうことだ・・・?」
「・・・・・・」
分からない。
鳥肌が立つ。
共有して誤魔化したいのに、タケシは考えるように沈黙を続ける。
怖い、怖いのに俺は一歩、二歩と進んでいく。
そして三歩目を踏もうとした時・・・
「おい!横に飛べっ!!」
何か結論に至ったタケシは叫んだ。
その後ろには・・・巨大な物体。
ライトとライトの間の数字に俺は戦慄した。
~~~
あったかい、なんて感じられない。
次々に感覚を失っていく。
タケシ、天国であったら一回、殴らせろ。
で、笑い話にしようぜ。
消えていく意識の中で最後に聞き覚えのある声が聞こえた。
「おい!ライトを貸してくれ!」
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
良かったらポイントを入れてやってください。
では、ありがとうございました!




