幻の食材(グミグミのアレ編1)
前回のあらすじ:聖剣も~らい。
幻のスライム。
コークタウンに寄った時、
その話をブラックは耳にした。
「そいつは、すげーうまいらしいんだよ。でもよ。一生で一度もお目にかかれないくらい珍しいんだぜ」
酒場の親父は顎鬚を触りながら言う。
「メタルスライムくらいめずらしいのか?」
ブラックは酒をあおる。
「あん?メタルスライム?ちっ、ちっ、ちっ、メタルスライムなんて、そんなにレアじゃね~じゃね~かよ。その幻のスライムはな、プラチナスライムよりもずっとレアなんだってよ。伝説級っていうくらいにな」
「スライム系は、いまいち信用できないな」
ブラックは食べることが好きだった。
世界にはさまざまな生態系存在している。
違う世界に行けば、
出会う食材はまた違う。
ブラックは食べれるものから、
食べられないものまで、何でも食べてきた。
「ほう、スライムを食べたことがあるような物言いだな」
「大方は、食べたんじゃないのかな。普通のスライムは、味のないグミだった。内臓器官は食べているもののせいなのか、水といって差し支えなかったな。メタルスライムなんて、金属を食べているから、味はまさにその食べている金属の味。まあ、目だけは若干珍味だったがな」
「ほう、そりゃあ、ずいぶんと詳しい。おたく、結構食べているねえ」
「どうも」
ブラックはどれだけでも食べることができた。
食べようと思えば、無限大に食べることができる。
現在、一日で食べた最高記録は、
山一つ分。
いろんなものを食べたくて、
いちいち食材を一つずつ食べるのがめんどくさくなり、
山一つペロリといったのだ。
味は、ほとんど鉱物の味だった。
当然ちゃあ、当然だった。
「で、おっさん、そのスライムはなんという名で、どこにいるんだい?」
「ちっ、ちっ、ちっ、極秘情報だから、ただじゃ教えられないな」
「そうかい、ならこれならどうだい?」
ブラックはロープから金貨を取り出した。
金貨十枚をカウンターに積み上げる。
「ほう、金貨十枚か」
ファンタジアでは、街ごとの物価の違いはあれど、
金貨一枚は、酒樽一個に相当するというのが相場だった。
つまり、この酒場の亭主は、
その幻のスライムの情報を提供するだけで、
酒樽10個分の価値を手に入れることができるわけだ。
ただ、ブラックにとってその出費は痛くもかゆくもなかった。
金貨など、つくりだせばいいと思っていた。
それに、そんなことをせずとも、
亭主の脳みそから、無理矢理情報をひき出してもよいのだ。
まあ、どちらの選択をしても、
ブラックはノーダメージだった。
「で、どうする? 情報を提供してくれるかい?」
「しょうがない! あんちゃんの熱意に負けた。今回はおおまけだ!」
カウンターの上に積んだ金貨をおっさんは懐にしまった。
しめしめ、大儲け、大儲け、
というおっさんの心の声がブラックには聞こえていた。
「で、もう一度訊くが、そのスライムは何という名で、どこにいるんだ?」
「誰にも言うんじゃね~ぞ。これはな、とある筋からの情報なんだがよ」
酒場の親父は、ブラックの耳に口を近づける。
「ああ、わかっているさ」
「コークタウンから北へ5日、氷山の壁を越えてさらに5日、深淵の森に入りさらに3日いった場所に、えもいわぬ美しい湖があるという。そこで、満月の夜、これから言うあることを行えば、幻のスライム――エンジェルスライムが現れるという……」
次回予告:ハッスル、ハッスル、エルフ、ちょうちん