聖剣エクスカリバー
前回のあらすじ:バイバイ。
とある洞穴を見つけた。
それは、ファンタジアの最南端の島で、
島の周囲が岩壁に囲まれ、
決して船では辿り着くことのできない場所だった。
その島の中央には巨大な樹が生えており、
その樹の根元には洞穴があった。
不思議な力を感じたブラックは、
その洞穴に入り、横になっていた。
何時間ぐらい寝ただろうか?
月の赤い光がちょうど洞穴に差し込んだ時、
女に声をかけられ、
股間をコンコンとノックされた。
「もし……もし……」
「あ、あう!・・・三日三晩待って、やっと、やっと来たか」
予感はあった。
この洞穴は聖なる力で満ちており、
しかるべき時にイベントが発生するのだと。
女の体は、青い炎のように揺らめいていた。
何千年も前に亡くなった死者で、
かなり高貴な人物だとわかった。
ブラックは彼女の記憶を探ると、
彼女は勇者の母親だった。
それも太古の勇者の。
「俺を、勇者の剣へと導いてくれるというわけだな」
コクリ、と青く透明な女は頷いた。
次の瞬間、体がフッと軽くなった。
そして、気がつくと、
ダンジョンの中にいた。
湿っぽく、かび臭い。
また薄暗かった。
この勇者のダンジョンは、
地下50階あるのだとわかった。
一階一階攻略していくのもありだが、
面倒なので、
最下層までダンジョンの床を壊しながら、
ブラックは下りていった。
最下層――地下五十階。
そこには、石の巨人が鎮座していた。
荘厳な兜と鎧を身に着けていた。
巨人へと続く石柱周囲に赤い炎が灯り、
巨人の背後にある台座には、
光り輝く剣が突き刺さっていた。
「勇者よ。最後の試練を超えてみよ」
ブラックの『光のオーラ』に巨人が反応する。
その光のオーラは、ブラックが能力で生み出したものだった。
「では、その光り輝く剣をいただこう」
「ならば、我を超えてみせよ」
巨人が立ち上がり、
斧にも似た巨大な剣を振り上げた。
ブラックは指先で、
その剣を受け止め、
巨人に息を吹きかける。
すると、次の瞬間、
巨人の体は、ピキピキピキと音をたててひび割れ、
さらにもう一度息を吹きかけると、
バラバラに砕け散った。
ブラックは台座へとのぼる。
「これが、ファンタジアに平和と秩序をもたらしたとされる――聖剣エクスカリバー」
柄を握ると、難なく引き抜くことができた。
鋭利な剣身は白銀色に輝き、
ツバと握りには色とりどりの魔法石があしらわれていた。
ブラックはその剣を大したものではないと思った。
自分がクリエイトした剣の失敗作――『闇の剣』ですら、
星一つを粉々にするだけの威力がある。
その出来そこないと比べても、
この聖剣の威力は、あまりにも脆弱だった。
「まあいい、コレクションに加えておこう」
ブラックは聖剣エクスカリバーを、
自らの剣のコレクションに加えた。
対して、ファンタジアの勇者は、
自らの最強武器を失ってしまったこととなる。
次回予告:グミグミ、幻、酒屋の親父