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悪役令嬢ひのこの創られた恋心(1)

前回のあらすじ:いじめっ子をカエルにした。

 復讐を二人して、ブラックは他のことがしたくなった。


 中学校の時代、数々の男をたぶらかし、

 数多もの女を傷つけ微笑んでいた――ある女がいた。

 そいつは外資系企業社長の娘で、

 母親がイギリス人のハーフだった。


 名前は――クリスティーン・ひのこ。

 次のターゲットはこの女だ。



 ビルが立ち並ぶ、街の中心街でブラックは立っていた。

 ひのこが数分後にここに来ることはわかっていた。


 何故、わかっていたかって?

 呼んだからだ。

 もちろん、ブラックは、ひのこの電話番号もLINEも知らない。

 そんなものは必要ない。能力を創造すればいいのだ。


 名前などなんでもよい『クリスティーン・ひのこを誘う甘い香り』とでも名付けておこう。



「あ、待った~。三十分も遅れてごめんなさい、タクシーがお笑い芸人の渋滞に引っかかってしまったの」


 髪はブラウン、服は白のワンピース。

 右腕にはブランド物のバックを下げ、

 手を振りながら、

 ひのこはブラックのもとにかけて来た。

 男の好みを知っているのか、

 ワンピースにはフリルがふんだんにあしらわれていた。


「別に気にしていないよ。ちょうど、僕も今来たところさ」


 もちろん、ひのこはブラックのことは知らない。

 黒峰黒也を知っていても、

 あまりにも今と容姿が違いすぎるから、

 ブラックのことを黒峰黒也とも思っていない。


 しかし、それでも、ひのこにとってブラックは、

 優先順位が一番になっている男性だった。



「あ、お財布にお金が入っていない。あのね、お金を忘れちゃったんだけど。ちょっとだけ貸してくれない?」

「ああ、いいよ」


 ブラックは、百万円をひのこにポンッと手渡す。


「あはっ、私ね、有名ブランド店のバックが買いたかったんだ。ちょうど今日が発売日なの。でもこれだけで足りるかしら?もし、足りなかったら、また、お金を貸してちょうだいね」

「いくらでも貸してあげるよ。お金を創りだすことなんて、僕にはわけないことだからね」

「それじゃあ、はやく、『ヤンデレ悪役令嬢の華麗なる復讐』を見にいこ!」


 ブラックとひのこはデートをした。


 

 数時間後、映画を見終え、カフェでお茶をし、

 高級イタリアンで食事を終えたブラックとひのこは、

 公園のベンチに座っていた。

 時刻はすでに夜の九時をまわっていた。


「今日は楽しかったわ。『ヤンデレ悪役令嬢の華麗なる復讐』、すごくよかった。まさか、最後の最後でああなるなんて予想すらしていなかった」

「僕もびっくりしたよ。最後にアルバート公爵様が、崖から飛び降り、運悪く崖下の岩に突き刺さり、内臓をぶちまけていたシーン・・・あれは胸が苦しかったな」

「うん、私も、苦しかった。涙と鼻水が出て止まらなかったもの」


 二人の間に沈黙が入り込む。

 ブラックは、ひのこが自分を求めていることに気がついていた。

 体温が上がり、体を震わせ、

 スカートの奥にある布に包まれた部分が潤っているということも、

 はっきりと感じ取っていた。

 だが――


「あのね、今日、両親が仕事の都合で家に帰ってこないの。だから、私、まだ今日は、大丈夫なの。あの・・・私、まだ帰りたくない。ブラックと一緒にいたい」

「ごめんよ、僕はもう帰えらないといけないんだ。明日も仕事で早いからね。人気アーティストは忙しいんだよ。今日だって、時間がちょっと空いたから、急いでビッチなひのこに会いに来たんだ」

「やっぱり、週間ダウンロード1000万の人気アーティストは忙しいのね。そうね、わかったわ、諦める。でも、お願い、お別れのキスはしてちょうだい」

「ごめん、それはできない」

「え?どうして?いつもしてくれていたじゃない」


 ひのこの偽りの記憶にはブラックが帰り際、

 いつもキスをしてくれたとすりこまれていた。


「実は、本当のことを言うと・・・今日、とんでもない悪臭を放つ君に別れを言いに来たんだ」

「え?」

「僕は金輪際、ドブスな君と会わない」

「え?・・・なんで・・・どうして・・・」

「実は、僕は君の薄汚い過去をしってしまったんだ。だから、僕は金輪際、雌ブタな君と会わないことにした」

「どうして、どうして……」


 ひのこの目から涙がこぼれ出た。

 しばらく、ひのこは言葉を発することができなかった。


「あの・・・ブラック・・・どうしたら、私を許してくれるの?」

「それは、君の背後にある罪なき人々の怨念が消えただろうね。そんなこと、世界が一千回崩壊しても、絶対にありえないだろうけどね」

「なら、私との婚約を破棄するつもりなの?」

 

 ひのこはブラックと婚約をしていたと思い込んでいた。


「婚約を破棄?ああ、そうきたか。そうだね。婚約破棄するよ。ブッチリと」

「ああ・・・」


 ブラックはベンチから立ち上がり、歩いて行った。

 ひのこはブラックの背を見送った。



 婚約破棄と言われても、

 ブラックへの留まることを知らないこの胸の奥を揺する激しい感情は、

 いったい何なのか、とひのこは戸惑っていた。


 ひのこの心臓は、ありえないほど速く高く脈打っていた。

次回予告:恋心、怨念、パパ

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